恋ベル15

 夫婦となり二人で微笑み合いながら私の家に帰り、必要な荷物だけを持って桜井のマンションへ向かう。桜井のマンションもまた立派で私は口が開けていた。桜井はポケットから鍵を取り出すと鍵穴に差し込み玄関を開ける。


「どうぞ。」


 少し緊張気味にゆっくりと入るとそこはまた広々とした部屋だった。今まで住んでた家が惨めになり気持ちが少し沈んでいた。


「部屋どうする?寝るときは俺と一緒に寝る?」


 私は何も言えないでいたと言うより答えられなかった。


「一つ部屋使っていいから勉強もあると思うし。じゃぁ寝るときは俺と一緒な。」


“もうわからない…。”

 

 桜井は私を見て微笑んでいるとその時インターホンがなり桜井はインターホン確認しに行く。


「邪魔者が来た。」


 そう言うと玄関に鍵を開けに行く。


「ヤッホー!絢桜!きたぞ!」

「社長!!」


 葎成は勢いよく玄関から飛んでくる。


「絢桜。その社長やめない?煜でいいから。」

「無理です。」

「ハイ。敬語使ったから罰として呼び捨てな。」

「せめて煜さんでいいですか?」

「え〜。」


 バシッ!鈍い音がなる。桜井が新聞を丸めて葎成に叩いていた。


「しつこい。」

「いてぇな。せっかくお祝いに来てやったのに。」

「頼んでない。」

「絢桜。本当に絢と結婚して大丈夫?」


バシッ!桜井はまた葎成を叩く。


「なんなん?一人だけ幸せなろうなんてゆるさねぇ。」

「葎も結婚すれば?相手山ほどいる。」

「そうなの?」

「俺は興味ない女には手を出さない主義なの!」

「はいはい。」


 桜井と葎成のやり取りを見て可笑しくて笑う。


「何か手伝うことある?って荷物これだけ?」


 リビングに置いているドラムバッグ二つを見て指をさす。後は学校の鞄といつも持って歩いてる鞄だけだった。


「絢桜。可愛いのにもっとオシャレしたら?」

「学生にはオシャレ必要ないです。勉強のみ。」


 葎成は私の言葉を聞いて大笑いする。


「絢桜。先に部屋に荷物運んで必要なものあったら言っていいから。」

「ありがとう。」


 荷物持ち言われた部屋に入る。


「広!」


 荷物をクローゼットの中にあるチェストに入れる。


「クローゼット…寂しい。」


 あまりにも少ない荷物でクローゼットの中はスカスカだった。


「なんか絢桜は絢には態度違うよなぁ。俺にはあんな優しい顔しねぇもん。」

「葎が嫌なことしたりするから。」

「愛情表現!…けど本当。俺は未だになんとも言えねぇわ。」


 葎成は私の入っていた部屋を眺める。


「どんな事あっても俺は絢桜を守るって決めてる。」

「絢が言うならそれでいいけど。けど困った事あったら言えよ。」

「ああ。」



 片付けをして部屋を出て来ると葎成の姿はなかった。リビングのテーブルの上にあるパイナップルを見つける。


「パイナップル!!」


 パイナップルをよく見ると『俺も幸せにしてくれ!おめでとう!』と書いてあるメッセージカードを見つけ、あまりの嬉しさに涙が溢れる。私はパイナップルを抱きしめるがチクチクと棘が刺さるが気にもせず優しく抱きしめた。


「ありがとう。あれっ?煜さんは?」


 周りを見ても気配もなく桜井に尋ねるがちょっと前に帰って行ったという話だった。私はパイナップル抱きしめながらお礼を沢山心の中で言った。


「絢桜。いちよう聞くんだけど洗濯はどうする?」


 桜井は少し戸惑いながら目を逸らし尋ねる。


「あ〜えっと。一緒でも大丈夫だけどスーツはさすがにクリーニングですよね…。」


 何故か私も色々頭の中で男性の物を考えていると恥ずかしくなり敬語になる。


「クリーニングはマンションのエントランスで受付できるからその時一緒に…もし抵抗あるなら俺の分は置いといてもらっていい。」

「洗濯カゴに入れといてください。洗濯します。」


 パイナップルを抱きしめ下を向き話す。


「わかった。パイナップルそろそろ離した方がよくない?ちょっと妬いてしまう。」


 桜井はパイナップルを取り上げ、キッチンに置くと私を抱きしめる。


「今日からよろしくお願いします。」

「こっ…ちらこそ…よろしく…お願いします。」


 互いに抱きしめ合いながら少し可笑しくて笑う。その日は色々片付けで疲れ、外で夕食を済ませ緊張しながらベットに並び眠りについた。


 マンションから学校に通う事になり新しい環境にドキドキしながら学校へ向かう。住所と名義変更の手続きの書類をもらう為職員室を尋ね、先生は何かを言いたそうな顔をしていたが黙って書類を渡してくれた。職員室をでて教室を出ると井下が走ってくる。


「クロ!走らない!」


 私の声に止まり早歩きで近寄ってくるその姿に私は笑ってしまう。


「笑い事じゃないって!吉永君喧嘩してる。」

「えっ!?」


 私も急いで教室に向かうと教室の中は机から全体的にバラバラに乱れていた。周りも誰も止めなくて見ているだけだった。私は急いで止めに入る。


「やめなさい。やめなさいって!!」


 私の声も届かず自分の鞄を吉永と喧嘩してる相手に投げつける。


「イッテェなぁ!何すんだ?!」


 吉永は私の方に向かってくる。


「何すんだ!?それはこっちのセリフ!何してんの!?教室もこの状態になるまで何が原因!?」


 吉永は私の喝で落ち着きを取り戻す。


「こいつが俺の悪口言ったから。」


 吉永のいう相手に目を向け私はその相手のところへ行く。


「何言ったの?」

「別に何も。」

「お前!!」


 吉永は飛びかかろうとするところを私は止める。


「教えて。」

「いつも女子と騒いでっからそれで調子に乗りやがってって。」

「わかった。」


 私は吉永の方を向くと吉永は体をビクリとさせる。


「吉永君も今後気をつけて、教室は騒ぐとこではないから騒ぐなら運動場。」

「運動場って…ごめん。」


 冷ややかな目で吉永を見る。


「俺もごめん。」


 二人は仲直りをしクラスのみんなは机と椅子と直すがゴミいっぱいになっていたため掃除を始める。乱闘な一日でクタクタになった私は放課後教室で先生に言われた資料を作っていた。窓を覗くと吉永が運動場にいてそこには女子が集まっていた。


“本当。悪い人ではないのに問題起こすんだろう。はぁ〜。けどモテる人って何か特別な何かがあるのだろうか。ダメダメ資料資料。”


 窓の外を見ると今にも降りそうな曇り空だった。私は急いで資料を作り帰る支度するが靴箱までくると大雨が降ってきた。


「あちゃ〜普通の傘持ってないや。桜井さんも持ってないよねきっと。」


 色々考えながら暫く下駄箱の下のの子に座っていた。持っている折りたたみ傘ではこの強風はきっと折りたたみ意味がないと思い、折りたたみ傘と小さく会話をしていた。


「あれっ?井梅。まだ残ってたの?」


吉永が下駄箱へ来ると靴を取り出す。


「吉永君。うん。大雨だから避難中。」

「じゃぁ俺も。」


 私の座っている横に座るが吉永をそっと見ると吉永は私を見てニヤッと笑い咄嗟に前に向く。


「なぁ。井梅って彼氏いるの?」

「まぁ。一応。」


“一応というか結婚してますみたいな。”


「そうなんだ!」


 吉永は予想外な顔しては驚いた目をする。


「その反応は何?」

「イヤイヤ。いないと思っていたから。相手は?年下上?」

「年上だけど。あの吉永君に私の恋愛話しても楽しくないと思うけど。じゃぁ私から吉永君はいるの?」

「いないよ。ってか作らない。俺、姉貴の恋話聞いて恋するの怖くなったんだ。」

「何かあったの?」

「自殺未遂した。」


 その言葉にただ驚く事しかできなかった。


「といってもまぁ命には支障なかったんだけど暫くは立ち直れなかったみたい。けど今は新しい彼氏作って幸せな顔している。その時付き合ってた彼氏が今の俺みたいに女子に人気あったみたいで。」


 そこまで言うと吉永は私を見るが私は冷ややかな目で見返す。


「それで?」

「スルーかよ。でっ彼氏が悪かったわけじゃなかったらしいんだけど、詳しくはわかんねぇけど。だから俺は彼女作らない。本当に自分が男して守れる男になるまでは。」

「へぇ。なんかカッコいいね。」

「惚れた?」

「ううん。」


 吉永は作り笑顔を向け、私は首を振りながら答える。


「あはは。即答。けど姉貴が言うんだその時の彼に謝りたいって。だけど全く詳細がわからないからって。」

「そうなんだ。どこかできっと会えるんじゃない?世間は狭いよ。」

「だといいな。まぁ姉貴も今が幸せならそれでいいと思うんだけどなぁ。おっと小降りになったから俺は走って帰るよ!じゃぁな!」


 吉永の姉の話を聞いて恋って幸せに思うけど恐ろしいって思った。些細なことで変わる恋。考えていると私は彼女というより妻だという事にも気づいた。恋人と妻の違いはなんだろうかそんな気持ちを抱えたまま傘をさし桜井のマンションへ帰った。

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