恋ベル11

 次の日、眩しい光に目が覚めベットから飛び起きる。時刻を確認すると朝六時だった。朝食を作るためにキッチンに向かうとリビングには昨夜葎成と桜井が飲んだと思われるお酒の空ビンとグラスが置いてあった。そっと空ビンを持ちキッチンへ運ぶ。そのまま朝食を作りリビングで寛いでいたが時刻九時になるが誰も起きてこない事に私の機嫌が限界になり各部屋へ乗り込む。


「クロ!!いつまで寝てるの!!起きなさい!」

「う〜まだ…無理…。」

「楽しい日も明日で終わりだよ。」


 耳元で囁くと井下は飛び起き洗面所へ走っていく。次は桜井の部屋を軽くノックするが返事がない。そっと部屋に入るとベットで寝ている桜井を見つける。顔を覗くといきなり腕を掴まれそのまま流れ込むようにベットに倒れこむ。


「おはよう。寝起き襲うのは男の役目だけど。」


 耳元で言われ顔を上げると優しい顔した寝顔の桜井がいた。心臓が大きく跳ねるが桜井の顔を見ると嬉しくて思わず抱きつく。桜井は大胆な私の行動に微笑みそっと抱きしめる。


「なんかいい匂いするね。」

「あっ。朝ごはん作りました食べましょう。次は葎成さんを起こしに行ってきます。」


 体を離し、さっさと桜井の部屋を出て行く。桜井は暫くして私の言葉に思い立ち慌てて私の後を追う。葎成の部屋を開け、中に入っていくが部屋を見て驚く。椅子が一つだけでそこで寝ている葎成。あまりの殺風景で立ち尽くし葎成はゆっくりと目を開け私の姿を発見すると、のそっと起き上がりすぐさま寄ってくる。私は後ずさりするが背中はドアだった。


「何しに来た?」

「あっ朝ごはんを…作ったので。」


 私の肩にコツッと頭を置く。


「…あっ…ありがとう…眠たい。」


“…びっびっくりした。怖かった。”


 葎成はゆっくり私から離れ先ほどの椅子に向かって歩き出したその時、ドアが開けられ私はドアの勢いで前に倒れ込む。そのままの流れで葎成も私の下敷きになりしばらく動かなかった。


「絢桜!大丈夫か?」

「私は大丈夫だけど葎成さんが…。」

「イッテェ!…絢!」


 額をぶつけた葎成は朝から超機嫌が悪かった。朝食を食べながら桜井に自分の苦手なものをお皿に入れていた。それに額に冷却シートは貼り可愛い子供みたいだった。朝食を済ませた私達は別荘のプールに入る事になった。着替える為井下は私を連れて部屋に行く。


「クロ!私は水着ないよ!」

「言うと思ったから持ってきた。なんとその名もビ・キ・ニ!」


 井下はスーツケースから取り出し私に見せる。


「そのままだけど。ってか着ないからこれ無理だって!」

「あ〜もう。ごちゃごちゃ言わずさっさと着替える!」


 井下の手によっていつの間にか水着に着せ替えされた。


「うわー!めちゃ最高!シザ、絶対いい体してるよ。ビキニに負けてない!」


 鏡に写る姿に恥ずかしくなり私は大きめのTシャツを上から着る。


「やると思った。けど入るときは脱ぐ事!行くよ!」


 井下もいつの間にか着替え、私達はプールにいる葎成と桜井のところへ行く。彼達はプールの中にいてウォーターガンを持ってまるで子供が無邪気に遊んでいるようにはしゃいでた。彼達は私達に気づくとこっち来るように手招きする。井下は私の手を引っ張り走っていく。井下はそのままジャンプして飛び込む。私は飛び込めずただ立ち尽くした。桜井が私に向かって手を差し出し微笑む。


“水も滴るいい男だ。体つきも鍛えてるのかなぁ〜って私変態じゃん!”


 色々思っていると身体中が熱くなりそっと桜井の手を取る。


「絢桜。座って。」


 座ると伊達眼鏡をそっと外し、横に置くと結んでいる髪もほどいてしまう。髪がバサッと落ちてくる。


「えっ?」

「可愛い。」


 桜井は私を見て言うがもう恥ずかしくて鼓動の早さに耐えれそうになった。そのまま引きずられるようにプールに入るがつま先で立たないと水面ギリギリで口に水が入りそうだった。桜井に手を繋がれつま先でプールを歩いた。井下は浮き輪を使って泳いでいた。


「クロ!浮き輪かして!!」

「イヤ!溺れるもん!」


 ふたくれていると桜井は私の腰を持ち体が浮き、体同士が密着する。私は今にも倒れそうなくらいクラクラしていた。


「ヒューヒュー!」


 葎成は私達を見てからかい始めた。


ふる!」


 井下は葎成に言うと葎成は井下にウォーターガンで攻撃をし、井下は浮き輪を残して沈んでいった。怒った井下は浮き輪を葎成に投げ、二人のやり取りの姿を暫く見て私と桜井は爆笑する。


 少し休む事になり、全員プールから出てプールサイドに座っていた。バシャバシャと足で水を打つ。


「ハイ。どうぞ。」


 桜井は私に飲み物をそっと渡す。その飲み物の色が血の色に見え、匂いと色々観察をしていると桜井は小さく笑い私は桜井を見る。


「ごめん。行動が可笑しくて。ブラッドオレンジ。」

「ブラッドオレンジ?」


 桜井は私が疑問で返す事に少し驚く。


「あはは。飲んだ事ないんだね。ブラッドオレンジはオレンジの一種、大丈夫だから飲んでみて。」


 そっと口をつけ一口飲むと初めて飲む味に私はあまりの美味しさに驚く。


「おいしい!すごい、またオレンジと違うね。甘みがあるというか。」


 ゴクゴクと飲んでしまいその姿に桜井はクスクスと笑う。すぐになくなり私は空のコップを持って眺めていると頭の上からチョロチョロと水が降ってくる。見上げるとそこに井下がいた何か怒っているようだった。


「シザ。私に隠し事とはいい度胸してるじゃないか!」

「えっ?!」


 井下は視線を桜井に向け、私は井下に大事な報告していない事に気づき即さまに振り返る。


「ごめん。あまりの楽しさに言いそびれた。」


 井下は私の前に座り泣きそうな顔をみせすぐに微笑みかける。


「よかったね。わかってたけど私を捨てないでね。」

「それは絶対ないよ!」

「だね!けどシザ、いい加減Tシャツ脱がないと変な焼け方するよ。」

「えっ?」


 井下は私の着ているTシャツを脱がせ一瞬でビキニ姿になる。恥ずかしくなり桜井を見ると桜井の顔は赤くなっていた。その赤さにつられて私も赤くなる。


「絢桜エロ!」


 葎成が寄ってきて私を上から下まで見る。ドス!桜井は葎成の腹部をど突いていた。


「いて!絢!お前、今マジでど突いただろ?」


 葎成は腹部を抑えていた。


「葎。セクハラ発言はやめろ。」


 葎成はそのまま桜井の背中を手で押しプールに落とす。


 バッシャーン!


 ゆっくりと出てきた桜井は怒った顔をしていた。全員でその場で笑い転げまたそのままプールに飛び込み遊んだ。


 暫くしてプールから出ると着替えを済ませ私はコーヒーを淹れていた。葎成と桜井と井下はソファで座っていたがプールのはしゃぎで疲れたのか口数が少なかった。コーヒーを持ってみんなに配る。


「夕食どうしますか?作りましょうか?」


 全員に尋ねるがプール授業の後のように今にも寝そうな目になっていた。


「そうだな。絢桜も疲れてるだろうから何か頼むか?」

「ああ。」

「けど冷蔵庫に食材がまだありますけど。」

「使わなかったらそこまでだから。」


 その発言に立ち上がりウエストエプロンをつけ誰もが私を見る。


「何してんだ?」

「何って料理するんです。今は下拵えするので気にしないで寛いでてください。」

「絢桜。敬語。」


“…。”


「待っててね。」


 笑顔で言うと全員が大爆笑し、恥ずかしくなって冷蔵庫を開け暫く冷気に当たってた。


「あはは!しかも冷蔵庫に入ってるし。もう俺、何年分って笑ってる気がする。」


 葎成は一人ソファで笑い転げ、桜井も顔を隠して笑っていた。私は冷却期間を終えると冷蔵庫から離れて料理を作り始める。そして賑やかな夕食を終え、今日でバカンスも最後の夜。全員で庭で花火をする事になった。


「花火大会行きたいねぇ。」


 井下は花火に火をつけながら私に話しかける。


「だねぇ。私、バイトで毎年行ってない。」


 毎年花火大会の時、お店の屋台を出すためバイトをしていた。


「俺の会社からでいいなら見えるけど。見に来ていいよ。なぁ。絢?」


 葎成の言葉に私と井下は即振り返る。


「うお!ぷっ。すげぇ反応。」

「ああ。毎年会社では花火大会は会社で宴会してる。」

「おいで!大人ばっかだけど。」

「いいんですか?!行きたいです!」

「君たち二人だけ特別ね。」


 葎成は花火に火をつけながらウインクをする。


「私はバイトがあるのできっとギリギリだと思います。」

「いいよ。待ってるからおいで!終わっても宴は続いてると思うから。」

「遠慮しなくていい。俺も待ってる。」


 桜井は私の横に座り花火をしながら微笑むと私は嬉しくて頷く。


「な〜んか。すごく幸せオーラが…。」


 井下は私と桜井を見て羨ましく見る。


「古乃実。俺がいるじゃないか。」

 

 葎成は井下の耳元で言う。


「そうだね。」


 井下はなんの感情もなしに返す。


「酷くねぇ?」


 楽しい会話や時間も過ぎ、自分の中で忘れもしないような思い出を胸いっぱいにし、みんなと別れて家に帰ってきた。


「ただいま!」

 

 声と同時に駆け寄ってくる母。


「おかえり!どうだった!?」

「すごく楽しかったよ!」

「でっ?彼氏は?」


 母は私が黙っているのを見てに顔がやける。


「本当?社長?」


“…そこなんだ。”


「社長って…。う〜ん副社長なんだけど前から知り合いで。」


 母は突然私に抱きつきがすぐ体を離すと私の肩を持つ。


「絶対逃したらダメだよ!お母さんは失敗したかもしれないけど絢桜は幸せになってほしい。それにどんな事あっても自分を信じるんだよ。自分の気持ちさえあれば大丈夫だから。」


 母は私の肩をもち揺らしながら真剣に話す。


「お母さん。普通違う反応だけど?なぜに喜んでるのか…。」

「そりゃ玉の輿よ!」


 母の言葉に呆れ、けどお互い笑い合い久しぶりに私と母はその日の夜は旅行の話をずっとしていた。母も嬉しそうに私の話を聞いては付き合うきっかけなど友達と恋の話をしているように質問攻めに合い、途中で母は寝落ちし私は母の顔を見て微笑んだ。



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