第61話
Ruthとたわいもない雑談。
オランダの税金は高いだの安いだの、でも社会福祉は充実してる。いや、デンマークの方がすごいとか。医療費無料、出産費無料、教育費無料、その他優良高齢者サービス。教育費は幼稚園から大学まで無料。驚きである。
世界の税率ランキングは、オランダ8位、デンマークは7位だとか。ちなみに日本は2位。先進国ではトップだ。皆健康保険制度はいい。そのほかは国債費、地方交付税費、公共事業費などなど。しかし、取り際立った、未来へ手渡す税金の使途の特徴が見えないのは僕だけだろうか。
やはり、Ruthと話すと自然とガールフレンド、まきちゃんの話題になる。
Ruthが一枚のA4用紙を僕に手渡す。作者不詳の詩、らしい。
One night a man had a dream.
(ある晩、男が夢をみていました)
He dreamed he was walking along the beach with the LORD.
(夢の中で彼は、神と並んで浜辺を歩いています)
Across the sky flashed scenes from his life.
(そして空の向こうには、彼のこれまでの人生が映し出されては消えていきました)
For each scene, he noticed two sets of footprints in the sand: one belonging to him, and the other to the LORD.
(どの場面でも、砂の上にはふたりの足跡が残されていました。 ひとつは彼自身のもの、もうひとつは神のものでした)
When the last scene of his life flashed before him, he looked back at the footprints in the sand.
(人生の、つい先ほどの場面が目の前から消えていくと、彼はふり返り、砂の上の足跡を眺めました)
He noticed that many times along the path of his life there was only one set of footprints.
(すると彼の人生の道程には、ひとりの足跡しか残っていない場所が、いくつもありました)
He also noticed that it happened at the very lowest and saddest times of his life.
(しかもそれは、彼の人生の中で、特につらく、悲しいときに起きているのでした)
This really bothered him and he questioned the LORD about it.
(すっかり悩んでしまった彼は、神にそのことをたずねてみました)
"LORD, You said that once I decided to follow you, You would walk with me all the way.”
(神よ、私があなたに従って生きると決めたとき、あなたはずっと私とともに歩いてくださるとおっしゃられました)
”But I have noticed that during the most troublesome times of my life, there is only one set of footprints.”
(しかし、私の人生のもっとも困難なときに、いつもひとりの足跡しか残っていないではありませんか)
”I don't understand why when I needed You most You would leave me."
(私が一番にあなたを必要としたとき、なぜあなたは私を見捨てられたのですか?)
The LORD replied, "My son, My precious child, I love you and I would never leave you.”
(神は答えられた。 わが子よ、私の大切な子供よ。 私はあなたを愛している。 私はあなたを見捨てはしない)
”During your times of trial and suffering, when you see only one set of footprints, it was then that I carried you.”
(あなたの試練と苦しみのときに、ひとりの足跡しか残されていないのは、その時はわたしがあなたを背負って歩いていたのです)
読み終わり、Ruthに手渡す。
神をまきちゃんと読み替えると・・・
「She must be like the Load for you.」
(あなたにとって、彼女は神様のような女の子ね)
Ruthが微笑む。とても深くて青い眼。
ーーーーー
「スペインか、暫くぶりだな」
飛行機の座席につく。
サグラダ・ファミリアが脳裏に浮かぶ。そしてピカソ美術館、ガウディの建築物。
ワインも美味しい。作付け量、生産量は世界一。
スペインの名は、ローマ帝国時代にイベリア半島が属州ヒスパニアと呼ばれていたことから。
僕の旅は、いつでも、どこでも仕事もプライベートも自分を彩るぬり絵を放っておかない。怠らない。癖だろうか?
常に物事新しい目で見ること。新しい色を加える事。先入観を取り払う事。
人は自分の考えたとおりに生きなければならない。
そうでないと、自分が生きたとおりに考えてしまう。
「The weather enroute should be generally good, but we might have a few choppy areas. 」
(航路上の天候はおおむね良好ですが、ところどころ気流の悪いところを通過する可能性もございます。)
「So I do recommend you to keep your seat belt loosely fastened while you are seated, against unexpected turbulence.」
(突然の揺れに備えてベルトは軽くお締めおきください。)
人生も似ている。
おおむね良好だが、ところどころ気流の悪いところを通過する。
突然の揺れに備える。
機内誌。ニューヨーク大学特集。
ニューヨーク大学のリハビリテーション研究所の受付の壁に掲げられている無名兵士の詩の紹介。僕は大学へ一度仕事で訪れたことがある。その時知った。
I asked God for strength, that I might achieve
I was made weak, that I might learn humbly to obey・・・
大きなことを成すために、力を与えて欲しいと神に求めたのに、
慎み深く従順であるようにと、弱さを授かった。
I asked for health, that I might do greater things
I was given infirmity, that I might do better things……
より偉大なことができるようにと、健康を求めたのに、
人生を間違わないようにと、病弱を与えられた。
I asked for riches, that I might be happy
I was given poverty, that I might be wise……
幸せになろうとして、富を求めたのに、
賢明であるようにと、貧困を授かった。
I asked for power, that I might have the praise of men
I was given weakness, that I might feel the need of God……
世の人々の称賛を得ようとして、成功を求めたのに、
神様の存在に気付けるようにと、弱さを授かった。
I asked for all things, that I might enjoy life
I was given life, that I might enjoy all things……
人生を楽しもうと、たくさんのものを求めたのに、
あらゆることを楽しめる命を、自分はすでに授かっていたことに気付いた。
「Ladies and Gentlemen, we have arrived at Barcelona International Airport.」
(皆様、バルセロナ国際空港に到着いたしました)
「For your safety, please remain seated until the aircraft comes to a complete stop.」
(機体が完全に停止するまで、どなた様もお座席にお座りのままお待ちください。)
バルセロナ国際空港に着いた。
「さて、仕事だ」
気合いを入れる。
思考回路は仕事モードへ。R&D共同研究。
相手にどれだけのことを気付かせてあげられるかを考える。
自分がどれだけのことに気付けられるかを考える。
カタルーニャの子犬が吠えてる。
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