第19話
スケジュールは二日間、ホテルに缶詰状態の、新規事業立ち上げ初会議。
海外勤務、研修組は時差ぼけのせいもあり、少しばかり辛そうだ。僕は大丈夫。
新規事業は大きく分けて、調査・研究班、そして生産・営業班で構成される。
僕は調査班のプロジェクトをまかされる。身が引き締まる。
「かとちゃん、お久しぶり」
二日目に、新入社員の頃からお世話になっている新規事業部長が合流した。
「いいかい。これからの仕事では、会議や打ち合わせでも、単なる情報収集だけではなく、その時、その場で自分が感じたもの、なんでもいい、その場でしか浮かばないアイディアや思考をすぐさま書きとめておくことが大切だよ」
「常識、既存の理論にとらわれないように」
「それは他人の考えた結果で動いていることと同じなのだから」
「自分の心と直感を信じる勇気を持ちなさい」
「君は、君が本当になりたいものを、すでによく知っているはずなのだから」
「だから、君を選んだ」
「ありがとうございます」
僕は部長の言葉を心に刻んだ。
ーーーーー
スケジュール通りに会議を終え、成田へ向かう。
あっという間の二日間。電車のデッキでまきちゃんに電話。
「ホテルは母親にとってもらったの。領収書は女子会の宿泊代として、と書いてもらう」
「うちの親には、成田で女子会があるから、と話しておいたのよ」
「まさか、彼氏と会うため、みたいなこと領収書に書けないでしょ」
「うそは良くないかも……」と僕が呟くと、
「私もいやよ」
「じゃあ、但し書きに、まさ君と寝たため、と書いてもらう?」
僕もまきちゃんも笑った。
「まさ君、愛してる?」
「突然?何?」
「だから、まさ君、愛してる?」
「まきちゃんのこと、愛してるよ」
「ちがうちがう。まさ君が自分の事、自分自身愛してる?」
言葉の意味がよくつかめなかった……。
「私が求めているのは、自分自身を愛しているまさ君なの」
まきちゃんは平坦な口調で、
「自分を愛して」
「意味分かる?」
「分かりそうで分からない」
「もうすぐ分かるわよ。成田でね」
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