secomd story

「起きろ美遥、朝ご飯の仕度出来てるぞ」

 そういって部屋の前で声を掛けると中から美遥が起きる声が聞こえるのでトーストやハムエッグ、ヨーグルトの準備をする。

「おはよう、おにぃ」

 そういって美遥は席に着いて食事を始める。

「今日、買い物に行くって言っていたけど、1度帰って来てから行くのか? それともそのまま行くのか?」

 美遥に尋ねると彼女は少し考え

「駅前のデパートで探すから直接行った方が近いから、今日は生徒会の活動は無いから部活が終わり次第、校門前で待ち合わせして一緒に行こう」

 ということになったので部活が終わり次第、俺が美遥に連絡することになった。


洗濯物や洗い物が終わり、玄関を出ると小春ちゃんが立っていた。

「美遥に用事? ちょっと待ってて、もうすぐ来ると思うから」

 そういって家の中にいる美遥に声を掛けようと玄関に手を掛けると小春ちゃんが服の裾を握ってくる。

「そうじゃないんです。先輩にお話があるんです。私、先輩のこ……」

「おにぃ、お待たせ!」

 俺の後頭部に勢いよく玄関のドアがぶつかった……。

「あうぅぅぅぅぅーっ」

 痛い、物凄く痛い! 俺は、唸り声をあげながらドアにぶつかった、後頭部を抱えながら、その場にしゃがみ込む。

「なにしてるのおにぃ? そんなところで……」

 美遥が不思議な物を見つめるような目で俺を見つめている。

「お前が開けたドアが俺の後頭部にクリティカルヒットしたんだよ」

 そういって頭を摩りながら立ち上がる。

「あれ? 小春ちゃんも居る……。私、何か忘れてた?」

 そういって美遥が小春ちゃんを見つめると小春ちゃんは驚いた様子で頷き、小春ちゃんは鞄から古典のノートを取り出して、俺に持ってくる。

「実は宿題でどうしても分からない問題があったから、先輩に教えてもらいたかったんです」

「なんだ、良かった……。あっ、私も古典の宿題があったんだった! おにぃヘルプ!」

 俺一人で二人に教えながら登校するのかなりキツイんだけど……。

「おはようございます。鷺ノ宮さん」

「仁比山さん! ナイスタイミング! ここの二人、宿題が終わってないみたいなんだ……。しかもよりにもよって楪先生の古典……。俺は小春ちゃんを教えるから仁比山さんは美遥を教えるのお願いできないかな? 二人に教えた感じだと美遥の方が出来る」

 そういって俺は小春ちゃんからノートを受け取って、要点をまとめていく。

「別に教えるのは構わないのですが、その前にお誘いしたいことがありまして……。今度の金曜日の夜から月曜日の朝まで私と一緒に洞爺湖温泉に3泊4日で旅行に行きませんか? 私、花火というものを見てみたいのです! 生徒会の親睦会ということでどうでしょう?」

 花火を見たことが無い……。そして花火を見るために、わざわざ洞爺湖に行く……。

やっぱり仁比山さんは相当なお嬢様なんだなぁー。

「俺はOKだよ、二人は大丈夫? それと生徒会の親睦会って言うなら楪先生も呼びたいけど良いかな?」

 そういって俺は仁比山さんに確認をとると彼女は嬉しそうに頷いてくれた。

 

その後、俺と仁比山さんは美遥と小春ちゃんに勉強を教えながら登校しているのだがどうやらこのメンバーで登校しているのが珍しいのか、さっきから視線を感じる。

「おはよう、朝からどうしたの?」

 そういって声を掛けてきたのは澪川さんだった。

「おはよう、いや、1年生組が宿題で分からないところがあったらしくて、俺と仁比山さんが二人に教えてるんだよ」

 そういって俺は小春ちゃんが分からないと言っていた問題を澪川さんに見せる。

「あぁっ、この問題は簡単なやり方があってね……」

 そういって澪川さんは小春ちゃんに説明をしていく。かなり分かりやすい説明だったので小春ちゃんもビックリしていた。


 そんなことをしながら校門の前にたどり着くと七緒が誰かを探していたのかキョロキョロと辺りを見回している。

「どうしたんだ七緒?」

 そう声を掛けると俺達に気がついたのか七緒が駆け寄ってくる。

「継、コレを見て!」

 受け取った大きな紙を見ると、それは隣の高校の文化祭のポスターだった……。

「コレがどうしたんだ? 隣の高校の文化祭のポスターじゃん?」

「開催日を見てよ!」

 ポスターに書かれている文化祭の開催日を確認すると俺達の文化祭と日時がかぶっている。

「ありゃりゃ、見事にかぶったね。どうするの?」

そういって七緒を見つめると彼女はオロオロしながら俺を見つめて

「今日の放課後、生徒会室に集合! 何か案を一人一個は出してね!」

 そういって七緒は嵐のように去っていった。


「じゃあ今日は生徒会があるんだね? 一緒に帰ろうと思ったんだけど……。残念」

 澪川さんはそういって『先に教室に行ってるね』と言って先に行ってしまった。

「一人一個か……。ちなみに隣の高校の文化祭ってどんな感じなんだ?」

 そう尋ねると小春ちゃんが俺の持っているポスターを指差す。


【庶民には味わえない贅沢を】


「うぜぇ……。何が【庶民には味わえない贅沢を】だよ……」

「だけど先輩、そこの高校は御曹司や令嬢が多い私立高校で有名なんですよ……。去年はかぶらなかったんですけど、一昨年はかぶったみたいで人が少なかったんですよ」

 そういって小春ちゃんが溜息を吐いて『よりによって私が生徒会に居る時に』とボヤいている。

「俺に策あり、みんな協力してくれるか?」

 そういうと、その場にいた3人は頷いてくれる。

 さて、これから忙しくなるぞ! 


 5分前の予鈴が鳴ったので俺達は慌てて教室にむかう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

継君は普通がいい 兎神 入鹿 @Destiny

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ