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「少しは落ち着いたか?」
そのあと、周りからの視線が痛く、俺達は逃げ込むようにカフェへ入った。
「うん、ごめんね、取り乱しちゃって」
向かいに座る七緒は苦笑いをして注文したアイスコーヒーをストローでかき混ぜる。
「それにしても驚いたよ、七緒があんなに泣いて取り乱すなんてさ」
そういって七緒を見つめると彼女は俯いて『だって映画みたいになったら嫌だったんだもん』と呟く。
「そんな、映画は映画だよ。そんな簡単には、いなくならないって」
そういって笑いかけると七緒は俺の顔を睨みつけてくる。
「前も、前もそういって私の前から居なくなったの覚えてないの? 私、継が引っ越したのを聞いて大泣きしたんだからね」
七緒は、頬を膨らまして俺のことを見つめてくる。
「はい、本当にすみませんでした」
そういって七緒を見つめると彼女は笑って
「今は怒ってないよ、こうしてまた会うことが出来たんだから、でもこれだけは覚えていてほしいの『継のことを大切に思っている人は私も含めたくさん居る』ってことをだから自己犠牲の考え方は極力控えてほしいな、小春から聞いたよ、また危ないことしたんでしょ? 本当に気を付けてよね」
確かに小春ちゃんや美遥、七緒の言う通り、アレは危なかったので俺は頷き、気をつけると伝えた。
「さてと、これからお店も夕飯時になって混み始めるから、そろそろ帰るね♪ 今日はありがとう継、楽しかったよ! また明日」
そういって七緒は自宅兼喫茶店に入っていく。お店の中は想像以上に忙しそうだ……。
「七緒には今日のチケットも貰ったし、映画館でハンドタオルも貰ってる……。なんだか貰いっぱなしだな……。よしっ、今日のお礼は今日のうちに! お客さん多いし、七緒と両親だけじゃ大変そうだから手伝うか」
そういって俺は扉を開けて中に居る七緒と七緒の両親に手伝うことを伝え、ホールでお客さんの対応を手伝うことになった。
「七緒ちゃん、コーヒーといつものお願い」
「おじさん、いつもありがとう! お父さん、コーヒーといつものお願い」(七緒)
「お兄さん、お冷のおかわりを貰えるかしら」
「はい、ただいまお持ちします」(俺)
俺と七緒は忙しなく店の中を歩き回っていると店の扉が開き、お客さんが入ってくる。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」(俺)
「おにぃ、やっぱりここに居た……。今、何時だと思ってるの? おにぃは私を餓死させるつもりなのかな?」
美遥が鬼のような形相で店に入ってくるので俺は慌てて壁掛け時計を見ると時計の針は、もうすぐ21時になろうとしている……。
「もういいよ! それよりおにぃ、お腹空いた!」
そういって美遥が俺を睨んでくるので俺が諦めて頷くと美遥はメニュー表のハンバーグと3千円もするスペシャルパフェを指差す。
「えっと、財布がピンチになるから普通のパフェがいいかなぁー」
そう美遥に尋ねると美遥は七緒に声を掛けて注文をしてしまう。
「おにぃ、ゴチになります」
5千円しかない俺の財布は美遥の食事代でほぼ無くなった……。
「ありがとね継君! おかげで助かっちゃった♪ たまにはお店に食べに来て、七緒も喜ぶから」
そういって七緒のお母さんはミントティーが入ったテイクアウト用の紙コップを2つ渡される。
「継、今日は楽しかった。また明日…。これ、さっきも言ったよね? まあいいや、お休み、継」
そういって七緒は手を振って、俺達を見送ってくれた。
「まったく、おにぃは本当にお人好しなんだから……。おにぃの良いところだとは思うけど大事な従妹の夕飯を忘れるっていうのはどうかなぁーって思うんだけど……。だけどスペシャルパフェが美味しかったから今回は水に流してあげる。おにぃが私に料理は俺がするから美遥は絶対にするなって言ったんだから、ちゃんと作ってよね」
そういって美遥は貰ったミントティーを飲みながら、俺の手を握ってくる。
「明日は買い物付き合ってよおにぃ」
嬉しそうに歩く彼女に手を引かれ、俺は美遥と一緒に家に帰るのであった。
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