Reflect

 さてと、盗撮された位置はここらへんだと思うんだけど……。

 そんなことを考えながら周辺を確認すると造化の植木鉢にボールペン1本分の小さな穴が開いている。

「もしかしてコレなのか? 」

 俺は造花を手に取り植木鉢から取り出してみると中にペン状の盗撮用隠しカメラがセットされていた。

 あとはこのカメラを調べて仕掛けたのが誰なのかを追求すれば解決だな。っと思っていたら扉の前で喋る女子生徒たちの声が聞こえる。

「美咲先生、3組の授業だったのにこんなところで何をしていたんだろうね? 七緒は何か聞いてる? 」

ヤバい、どうやら七緒の居る2組が体育館を使うみたいだ……。今出て行ったら俺、確実に変質者&盗撮犯になっちまう! どっかに隠れなきゃ……。俺は慌てて掃除用具が入っているロッカーに隠れる……。


「今日って授業何だっけ? 」

 そういって七緒が友人と喋りながら更衣室の中に入ってくる。

「確か新体操だったよ? レオタードに着替えなきゃいけないのがめんどくさいよね! ブラしてるとゴワゴワするから脱がなきゃいけないし……。七緒は良いよね、大きくて」

 七緒の後ろに居た女子が七緒の胸をワシワシしている……。

「それに、七緒ってば最近、隣のクラスの男子とやけに仲が良いじゃん! もしかして彼氏? 」

 そういうと周りに居た女子たちが七緒に群がる。

「えっ、確か隣のクラスの鷺ノ宮さんですよね? 本当なんですか? 」

 自分の名前が挙がり、動揺してしまい頭をロッカーの壁にぶつけてしまう。

「きゃっ、何? 何か居るの? 」

「にゃっ、にゃーっ……」

 苦し紛れに猫の声真似をしてみたけど誤魔化せるか? 

「どうしよう七緒……。私、猫アレルギーなの」

 そういってキャーキャー女子たちは騒いでいる。

「しょうがない、私が捕まえて外に逃がすから、ちょっと落ち着いてくれないか? 」

 そういって七緒が下着姿のまま、こっちに近づいてくる。ちょっ、止まれ! 止まれぇー

「ほら逃げ……」

 バレた……。目がバッチり合っちゃった……。

「にゃっ、にゃーっ……(頼む、理由は後で話すから上手く話を終わらせて授業に行ってくれ)」

  スマホの画面を見せながら鳴き真似をするとスマホを奪われ、ロッカーの扉が閉じられる……。


「猫ちゃん、居たの? 」

 周りの女子が七緒に声を掛けると、七緒は俺から奪ったスマホを見せる。

「このスマホの着信音だったみたい、それよりもみんな! 早くいかないと遅れちゃうよ! 」

 そういったあと、七緒はみんなにバレないように俺を睨みつけてくる。見るなってことですよね……。分かってます。


俺は女子が更衣室から出て行くまで息を殺し、目を閉じてジッとしていた……。


「先生まで……、どうしたんですか? 」

 目の前で正座をする俺と楪先生を見て七緒が不思議そうに首を傾げる。

「今回の件は色々と事情があったんだ……。だけど見てしまったのには違いないから謝罪をしようと……」

「ごめんなさい、今回のことは私も関係してるの! きちんと説明するから」

 俺と楪先生は、叔父の京極 仁志と佐々木 京助さんが下着姿の七緒が盗撮された画像を持ってきたこと、学校側は、認知はしているが介入しないこと、俺が盗撮犯を見つけることを頼まれ、その調査をしていたことを伝えた。

「私の下着姿……。絶対に許さない……」

「女の敵ですね、許しません……」

「先輩、捕まえたら私達に引き渡してください」

「おにぃ、私達も手伝うよ」

 強力な仲間を得たと思ったが……。


「シバく……」

「拷問ですかね? 」

「新聞部に売り飛ばしましょう」

「生徒会の忠実な犬になってもらいましょう」

 俺が見つけなきゃマズいと思った……。


「それで、鷺ノ宮くんは午後の授業、サボっていましたが何か分かりましたか? 」

 そういって仁比山さんはソファーに座り直した俺の顔を覗き込んでくる。

「サボっ……、まぁ、確かに授業には出なかったけど……」

 そういってカメラを調べた結果をまとめた紙をテーブルに広げる。

「うわっ、スゴイね継……。午後の授業の間にこんなに調べたの? 」

 不思議そうに七緒が俺を見つめてくる。

「先生が居る手前、あんまり言いたくは無いけど、一度家に戻って、部屋にある指紋採取キットを使ってカメラに指紋が無いか調べたら【左偏流弓状紋】っていって日本人では珍しい指紋だった……。それと都内でこのタイプの盗撮カメラが販売されているところを調べたら3か所あったから電話して情報を提供しないと警察に突き出すって脅してとった情報だとうちの学生が3人いた、こいつらが容疑者ね」

 そういって容疑者のプロフィールが書かれた紙と顔写真を渡す。


【1年3組 伊藤 幸次こうじ 男】


【2年2組 如月きさらぎ早苗さなえ 女】


【3年1組 清水 政宗まさむね 男】


 意外だったのが3人のうち1人が女性だったことだ……。

「ちょっと待って、何で早苗が容疑者なの! 早苗は絶対、こんなことしないよ」

 そういって七緒が俺のことを睨みつけてくる。

「そんなことを言っても購入者リストに載ってから、監視対象なんだよ……。俺は3年の先輩を監視するから1年男子は同じクラスの小春ちゃんがメインで、サポートは美遥に任せる。2年の如月さんは同じクラスの七緒がメインで、サポートが仁比山さん。3年の先輩は俺がメイン、サポートは楪先生に任せたいと思います。仁比山さん、ちょっといい? 」

 そういって仁比山さんと一緒に生徒会室を出て、場所を2年1組の教室に変える。

「どうしたんですか? 急に場所を変えて……。何か忘れものですか? 」

 仁比山さんは不思議そうに俺を見つめてくる。

「実は仁比山さんに伝えたいことがあって……」

 そういって仁比山さんを見つめると彼女は顔を赤くして、潤んだ瞳で俺を見つめ返してくる。

「2組の如月さんの監視、七緒は当てにならないと思うから1人で大変だと思うけど仁比山さんがメインで七緒にはバレないように監視をしてほしい……。大変だと思うけどお願いしても良いかな? 俺も出来る限りサポートするから」

 何故だろう、物凄く呆れたような顔で仁比山さんが見つめてくるんだけど……。

「はぁ、そうですよね……。鷺ノ宮くんはそういう人でした……。良いですよ、確かに友人を疑うなんてこと七緒ちゃんには難しいと思うので……」

 そういって仁比山さんは頷いて承諾してくれた。

 今週中(残り3日)に何とか解決して何も気にせずに、七緒と映画を観に行きたいな……。

 そんなことを思いながら、仁比山さんに3年の教室に行くことを伝えて、俺は3年の容疑者【清水 政宗】を探ることにした……。


 さてと……。確か1組は、こっちで間違いないはず。

 俺は三年生クラスがある本館の2階フロアに行くと廊下を歩く校長先生に出会う。

「校長先生、犯人の目星はついたので、これから証拠を掴もうと思います」

 そう伝えると校長先生は不思議そうに俺を見つめてくる。

「鷺ノ宮君、いったい何の話をしているんだい? 犯人ってどういうこと? 」

 ん? 話が通じてない……。

「えっ、俺の前の保護者【京極 仁志】から何も聞いてないですか? 学校の責任者に話をしたって言っていたけど……」

 そういうと校長先生は少し考えこんだあと頷いて

「今日は1日出張で今まで外に出ていたから、たぶん教頭先生に伝えたんじゃないかな? どういうことか気になるから、このあと校長室で話してもらっても良いかな? 」

 俺は頷いて校長先生と一緒に校長室に向かうことにした。


「なるほど、私が留守にしていた間にそんなことがあったのか……。教頭の気持ちも分からなくは無いけど、これは立派な犯罪行為じゃないか……。鷺ノ宮君、犯人が分かったら校長室に連れて来てもらっていいかな? それと、このことを知らせてくれた【京極さんと佐々木さん】も教頭に見つからないように呼んでくれないか? 教頭に伝えると体裁を守るために握り潰すと思うんだ……。だけど、そんな事には絶対にさせない」

 そういって校長先生は怒った表情で俺が渡した容疑者の書類を見つめている。

「継君、授業中に捜査をしたい時は私に連絡をしてくれ。私の手伝いをしているから欠課扱いにしないように伝えておこう。他の生徒会メンバーにも伝えておいてくれ」

 強力なバックアップをしてもらえることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る