ウソツキ

「継君、ちょっとお昼ご飯の前に生徒指導室に来てもらえるかな?」

 午前最後の授業が終わったと思ったら楪先生から呼び出しをくらってしまった……。

「俺、何か呼び出しをされるようなことをしでかしましてっけ? 」

 呼び出されるようなことは……、いくつかあるがバレてないよな? 

「い・い・か・ら生徒指導室に来なさい! 話はそれからです」

 そういって教室を出て行ってしまった……。

「何かやらかしたのか? 楪先生めっちゃ怒ってたじゃん……。ご愁傷さま」

 おい但馬、俺を拝むな! まだ死んでない……、まだ……きっと……。


「失礼しま……」

 生徒指導室の扉を開けると中に京極のおっさんと佐々木さんが居る……。

「した……」

 バレないように回れ右をして生徒指導室から立ち去ろうとする。

「ダメだぞ継、ちゃんと先生の言うことを聞かなきゃ」

 おっさんにバレてしまった……。背中に目でもあるのかよ、クソッ……。

「継君、何で呼ばれたのか分かってくれたかな? 」

 あぁっ、楪先生の背後に阿修羅が見える……。

「えっと……、ちょっと分かんないでs……」

「分かんないわけないでしょ! 私、このあいだ言ったよね? 危険なことはしないでって……。日本語でしっかり伝えたと思ったんだけど理解できなかったのかな? しかも今回は銃を持ってたヤクザの男性を相手にしたんでしょ? 下手したら死んでたんだよ? 何できちんと約束を守ってくれないの? 昔も今も……」

 そういって楪先生は泣きながら俺のことをジッと見つめてくる……。

「継ダメだぞ、女性を泣かせたら! うちの継が心配をおかけしてすみません……。それより先生、若くてお綺麗ですね! 彼氏とか居るんですか? 」

 そういって京極のおっさんは楪先生の手を掴もうとする。

「わざわざ学校に来てまでナンパか? 困ってるだろ、いい加減にせぇ」

 楪先生の手を掴もうとしていた京極のおっさんの手をぴしゃりと叩く。

「なんだよ、お前には可愛い彼女が居るんだろ? いいじゃん俺が誰に声を掛けたって」

 楪先生は何故、彼女の部分で反応して俺を見つめてくるんだ……。しかも若干怒った顔で……。

「違うから、彼女じゃないから! 生徒会の後輩だから! 腕に抱きつかれてたのは理由があって俺を一人にしたら、また危ないことをするかもしれないって言って、強引に抱きつかれてただけだからおっさんが勝手に勘違いしただけだからな? 」

 そういっても納得していないのか、おっさんはニヤニヤしながら俺を見つめていた。

「そんな事より、どうしておっさんと佐々木さんが俺の学校に居るんだ? 」

 不思議に思い尋ねると彼等は笑って俺を見つめてくる。

「俺達がここに来たのは理由があってな……。まぁ、この画像を見てくれ」

 そういって差し出されたスマホの画像を見ると、そこには友人と話している下着姿の七緒が映っていた。

「なるほど、おっさんが俺に何をしてほしいのかは分かったけど、学校はどうなの? 」

そう尋ねるとおっさんは頭を抱えて

「学校は警察が介入するのは嫌だそうだ……。だからお前が見つけてやめるように忠告しろ……」

 なるほど、黙認はしているが容認しないということか……。

 俺と京極のおっさんが二人で喋っていると向かい側で俺を見つめていた楪先生がおっさんのスマホを覗き込んでくる……。

「わっ、わわわわわわ……。警察なのに盗撮ですか! 人としてどうなんですか! 」

 そういって楪先生はおっさんのスマホを奪い取る。

「ちょっ、楪先生! 違うのおっさんが盗撮したわけじゃないんだよ……。たぶんおっさんはその写真がこの学校で盗撮されたものだって気づいて、俺に盗撮犯を特定して今後、こんなことをしないように釘を刺せってことなんだと思う! その写真から盗撮場所とか特定したいから消さないで! 犯人を見つけるためには必要な情報なの! 」

 スマホを叩きつけようとする楪先生を止めに入る。


「なるほど、そんな事情があったんですね……。取り乱してしまって、すみませんでした」

 京極のおっさんと佐々木さんが楪先生に説明をすると恥ずかしそうに顔を隠している。

「良かったよ、楪先生がおっさんのスマホを壊さなくて……」

 そういって先生から受け取った、京極のおっさんのスマホの画像を見る。

「たぶん、更衣室でこの写真を撮ったカメラは固定されてるな……。楪先生、俺とおっさん達と一緒に更衣室に行ってくれないかな? とりあえず、カメラを見つけて取り外しておきたいんだけど? 」

 そういって楪先生を見つめると楪先生は困った顔で頷くが京極のおっさん達は苦笑いして『わりぃ、俺達はこのあと共同捜査があって手伝えないんだ……。だから継、頑張ってくれ』といって帰っていってしまった……。いちおう楪先生のスマホに画像を送ってもらって、その画像を見ながら盗撮カメラを探しに体育館の女子更衣室に楪先生と二人で向かうことになった……。

「本当にすみませんでした。反省してるので許していただけないですか? さすがに楪先生と手を握りながら体育館に向かうって、絵面かなり問題ありますし……。それに恥ずかしいんですが……」

 そういって楪先生を見つめると彼女は顔を真っ赤にして頬を膨らまし俺を見ようとしない……。

「それじゃあ中に入って誰も居なければ、俺と交代で誰も入ってこないようにしてください」

 そういうと楪先生は頷いて中に入っていく。少し待っていると中から楪先生が出てくる。

「誰も居なかったよ。私、継君のしたことは正しいと思うし、偉いと思う……。だからって継君が自分自身を犠牲にするのは間違っていると思うの! だから私が継君を支える。1人で出来ないことも2人でやれば、出来るようになるかもしれないしね」

 そういって楪先生は笑いかけてくる。

「そうですね、なので監視をよろしくお願いします。俺、盗撮カメラ回収してきます」

 俺は、そういって女子更衣室へ入っていった。

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