PRIMALove

「ありがとうございました」

 なんとか明日の登校時間までにはクリーニングが完了するみたいだ。明日は体操着で登校して制服を受け取り、学校で着替えれば問題は無さそうだ……。

「クリーニングとか銭湯とか色々ありがとうございました」

 隣に居る京助さんにお礼を言うと彼は笑いながら『犯罪者を捕まえることが出来たんだこっちこそ協力ありがとう、家には一人で帰れるよな? あんまり妹ちゃんを心配させるなよ? 』と言って帰っていってしまった。

「美遥か……。って酢豚の材料買って帰らなくちゃ」

 俺は美遥にスーパーに寄るとLINKでメッセージを送って、スーパーに向かった。


「おかえり、大丈夫だったの? 」

 どうやら美遥たちは詳しい内容は知らないようだ。

「まあ、大丈夫だったよ。でも制服が汚れちゃったからクリーニングに出したから明日の朝、受け取りに行くからちょっと早く登校するから」

 そういうと美遥は『分かった』と言って部屋に戻っていく。


【美遥サイド】

 よかった……。おにぃがケガをしないで無事に帰って来てくれた。

「だけど、何もなかったって嘘つくなよ……。本当は、ひったくりだと思った男は覚醒剤の運び屋で拳銃を持った男を捕まえたことは佐々木さんの電話で知ってるのに……。信用されてないのかな? 」

 そんな不安が私の胸を掻きむしる……。

 だけど本当に無事で良かった……。

 私は泣きながらベッドに寝っ転がった。


 どうしたんだろう? 夕飯の準備が出来たから呼びにきたんだけど部屋の中から泣いてる声が聞こえる……。

「美遥、夕飯の準備が出来たからリビングに来いよ? 先に食べてるからな」

 扉をノックして、そう伝えて俺は部屋を後にした。


「おはよう、なんか嫌な夢でも見てた? 部屋の中から泣いてる声が聞こえたんだけど? 」

 そう尋ねると美遥は頷いて席に着く。

「パイナップル多めの酢豚にしたよ……。冷める前に食べよっか」

 そういって美遥を見つめると頷いて酢豚を食べ始める。

 無言のまま黙々とご飯を食べる……。

「おにぃ、佐々木さんから聞いてるから」

 食べ終わった美遥は、そう呟いて

「ごちそうさま、私は部屋に戻るね」

 そういって美遥は部屋に戻ってしまう……。 


 ヤバい……、バレてた……?


「美遥、ごめん! 黙ってたのには訳があって……。美遥に心配を掛けたくなかったんだよ! 悪いとは思ったけど……」

 美遥の部屋のドアの前で謝っていると向こう側から美遥の声が聞こえる。

「おにぃは、どうして無茶ばっかりするの? 一歩間違えれば死んでたんだよ? なのに意地になって……。バカじゃないの! 命があってこそなのに……。心配かけたくないとか言ってるけど黙ってる方が心配かけてるって自覚無いの? 」

 そういうとドアに何か物が当たる……。たぶん枕だろう。

「ごめん、今まで俺を預かってくれてた親戚の人たちは必要最低限の事しか聞かないし話さないのが暗黙のルールだったから……。だから急に話してくれって言われても、どこまで話していいのか分からなかったんだよ」

 部屋の中で怒る美遥にそう伝えるとドアの鍵が開く音がする。

「入ってきて」

 部屋の中から返事が返ってきたので俺はドアを開けて美遥の部屋に入る。


「どうして、私が怒っているのか分かる? おにぃ」

 タオルケットに身を包みながら美遥が、そう尋ねてくる。

「無茶をして危ないことをしたから? 」

 そう尋ねると美遥は呆れた顔で俺を見つめてくる。

「確かにそれも怒っている原因の一つだけど、一番の原因は他にあるんだけど……。気づいてないんだね? 」

 そういって俺のことを睨みつけてくる。

「いや、えっ……、だって……」

「もういいよ、私が怒ってる本当の理由は【家族の私におにぃから何も報告が無かった】ってことに対して怒ってるの、おにぃが拳銃を持ってた男を捕まえたって聞いたのはおにぃからじゃなくて佐々木さんからの電話で知ったんだよ? それに、おにぃから事件のこと何も聞いてないもん! さっきだって『大丈夫だったの? 』って聞いたら『大丈夫だったよ』の一言だけじゃん! 何も話してくれないって何なの? おにぃはおにぃのことを心配してた人の気持ちを考えてないから、そんな酷いことが出来るんだよ! 私がどれだけ心配してたと思ってるの! バカ! おにぃの大バカ! 」

 そういって部屋に置いてある、クマのぬいぐるみを俺に向けて投げつけてくる。

「痛ッ、痛いから美遥! ごめん、本当にごめんって」

 そういって謝るが美遥は頬を膨らましたまま俺のことを見つめている。

「おにぃ、おにぃにとって私って何なの? 」

 美遥は、そういって俺のことを見つめてくる。

「美遥は、従妹の女の子で、本音で喋れる数少ない特別な相手で大切な人だと思ってる……」

 しっかりと美遥を見つめて、彼女の質問に答えると彼女は顔を真っ赤にして

「うぅぅぅっ……。おにぃのバカ! もういい出てって! 私もおにぃの事を大切な人だと思ってるんだから大切な人に心配をかけないように報告・連絡・相談はしっかりしてよね! それじゃあ私は、もう寝る! 明日、ミナミん先輩や小春ちゃんに大丈夫だったって報告しなよ! 」

 そういって美遥は俺を部屋から追い出し、部屋の明かりを消して、寝てしまったようだ。

「おやすみ美遥」

 ドアの向こうに居る美遥に、聞こえるように声を掛けてシャワーを浴び、俺もその日は就寝した。


【美遥サイド】

 バカ! おにぃのバカ! 特別……。大切な人……。はわわっ、怒ってるのに顔がニヤケちゃうじゃんか! こんな状態でおにぃに怒れないよ! 色々言いたいことあったのに……。もぅーっ、おにぃのバカー! 

 私はベッドの上で足をバタバタさせて、なかなか寝れなかった……。

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