Prism
「スゴイですね! 鷺ノ宮さんは、いつ犯人がカラスだってことに気がついたのですか? 」
不思議そうに仁比山さんが尋ねてくる。
「まあ、俺もまさかこんなことが身近に起きるとは思ってもみなかったよ……。気づくきっかけになったのは今日、教室で澪川さんとの会話で中庭の木にカラスが巣を作って、つい最近まで子育てをしていたって聞いて、まさかと思って確かめに行ったらビンゴだったんだよ」
そういって笑いかけると美遥が何かに納得したように頷いている。
「なに頷いてるの美遥? 」
そう声を掛けると美遥は俺の方を見て。
「友達が腕時計の無くなった日、中庭で光る石を咥えたカラスを見たって言ってたから不思議に思ってたんだけど、きっと咥えていたのは校長先生の腕時計だったんだね」
それ、早く言ってほしかったな…。
「さてと、今日の生徒会活動は、これくらいにしてみんなで喫茶店に行かないかい? ちょうど今日までの無料クーポンがあって安くなるんだよ。継の歓迎会も含めて、みんなで行かないかい? そこの喫茶店、パンケーキがとっても美味しいの! 」
七緒の提案で俺達は喫茶店に向かうことになった。
「それじゃあ継、これから生徒会の一員としてよろしく! 」
七緒の挨拶と同時に他のメンバーが『よろしく! 』といってグラスをコツンとぶつけ乾杯をする。
「んんーっ、やっぱり紅茶おいしー! 」
そういって七緒が嬉しそうに紅茶を飲んでいる。
「このクリームソーダと言う飲み物も美味しいですよ! 私、初めて飲みました」
さすが仁比山さん(お嬢様)……。まさかクリームソーダを飲んだことが無いなんて……。
「おにぃ、ヤバい! ヤバいよコレ! 超ヤバい! 」
いちごのショートケーキを食べながら、ヤバいしか言ってないお前の語彙力の方がヤバいと思うぞ……。
「チーズの濃厚な味わいとそれを包み込み、層を成すクレープ生地……。さすがです。このミルクレープ! 」
そんなに熱弁しなくても旨いの一言で通じると思うぞ、小春ちゃん。
「うん、このコーヒーも美味しい……。こんないい店を見つけるなんて、さすがだな! 七緒」
そういって七緒を見つめると彼女は頬を赤らめ、恥ずかしそうにしている。
「それはどうもありがとう♪ 」
そういって白い髪のウェイトレスさんが注文していないのにマルゲリータピザをテーブルに置く。
「いや、お姉さん注文してないんだけど? 」
そういって白い髪のウェイトレスさんを見ると彼女は嬉しそうに微笑んでいる。
「ねえねえ七緒ちゃん、お姉さんだって! お母さん、そんなに若く見えるのかな? 」
ウェイトレスのお姉さんは嬉しそうに七緒に声を掛ける。
「お母さん、お姉さんって言われて嬉しいからって、はしゃがないでよ……。実はこの喫茶私の家なの」
七緒が顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
「へーっ、いいお店だね♪ コーヒーも美味しいし! 」
そういって七緒を見つめると七緒のお母さんが頷いて、俺の肩を叩いてくる。
「もーっ、お兄さん分かってるじゃん! そうだ、七緒のお婿さんにならない? 顔は良いのに昔、好きだった男の子のことが忘れられないみたいで誰とも付き合おうとしないのよ! だから私が生きてる間に孫の顔が見たいから……。君、七緒のお婿さんに……。ンンッー」
「お母さんは、うるさい! ちょっと黙ってて」
そういって七緒は立ちあがり、お母さんの背中に回り込み、口を塞ぐ。
「仲が良いんだね? 初めましてなのかな? 七緒さんとは昔、公園でよく一緒に遊んでたんですけど…。鷺ノ宮 継って言います。今は母方の姓なんですけど、昔は父方の京極 継って名乗ってました。コーヒー美味しかったです。また来てもいいですか? 」
そういって七緒と七緒のお母さんに笑いかけるとお母さんの方は、何かに気づいたのかニヤニヤしていて、七緒は顔を真っ赤にして頷いていた。
「それにしても七緒ちゃんの家があんな美味しい飲み物を提供する魔法のお家だったなんて驚きです」
いや、クリームソーダを飲んだことが無いからって3杯も飲む人初めて見たよ……。
「おにぃ、今日の夕ご飯なに? もぉーお腹ペコペコだよ♪ 」
さっき、あれだけ食ったのお腹ペコペコってどんだけだよ!
「芳醇なバターの香り、濃厚なミルクの味わい……。サイコーでした」
そんなに美味しかったのか……。今度俺も頼もうかな?
そんなことを思いながら帰り道を歩いていると前から歩いてきていた男性とぶつかってしまった。
「すみません大丈夫ですか? 」
そう声を掛けると男性は逃げるように走り去っていく……。
「どうしたのかな? おにぃが謝ってるのに『大丈夫』とか何も言わないで居なくなるとかおかしいでしょ! 」
そういって美遥は怒っているけど注目するべき場所はそこじゃない……。
「あの男性、もしかしたらひったくりかもしれない……。俺、追いかけるからスマホで通話つなげておくから、直ぐに警察を呼べるようにしてて」
そういって俺は後ろを振り向き、路地を走る男を追いかける。
「クソッ! こっちの方に走っていったと思たんだけどな……」
男を追いかけるうちに土地勘のない場所に来てしまった。十数年も地元を離れていたから仕方ないと言えば仕方ない。
「おい、誰にもつけられてねぇだろうな」
路地の奥からドスの効いた声が聞こえてくる。
「はい、途中で知らない男に追いかけられましたが撒いて来たんで大丈夫です。それよりも早くヤラせてくださいよ! 早く気持ちよくなりたいんですよ」
そういって男は女性用のバッグの中から白い粉が入った袋と注射器を持ち出して、自分の腕に注射針を刺そうとしたところをスキンヘッドの男が銃を取り出し運び屋だった男性を射殺した。
マジか……。
心の中でそう呟き、一刻も早くこの場を立ち去れと警鐘が鳴らす。
だからと言って、このまま帰るのは犯罪者を野放しにするのと同じ行為だ……。
俺はスマホを取り出して、シャッター音とフラッシュを無効にして写真を撮る。
その場を立ち去ろうとすると足音がだんだんと近づいてくる。
「早く帰ってボスにブツを渡さねぇーと俺まで殺されっからな」
今走れば俺が居たことに気がついてしまう……。俺は音を立てないように後ろへ後退してゴミの集積BOXの蓋を開けて、中に入れるスペースが在ったため、そこで身を隠す。
「それじゃあ帰るか……。チッ、どうして警察が居るんだよ……。どうすっかな、こっから出たらマズいよな……。隠れてやり過ごすか」
おいぃぃぃっ! 足音近づいてくるんだけど! 警察何やってるんだよ! 早くこっちに来いって!
「あっ! 」
「あっ……」
蓋を持ち上げるために両手が塞がっていた男の顔面を思いっ切り殴りつけて、怯んだところに追い打ちで側頭部に蹴りを入れるとスキンヘッドの男は地面に倒れる。
「警察だ、武器を捨てて投降してきなさい」
行動が遅すぎるぞ、東京の警察……。
このあと、やって来た警察に倒れているスキンヘッドの男を任していると京助さんが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「大丈夫か継君! 美遥ちゃんの電話をもらって慌てて応援と近くの交番に連絡を取ってから来たんだけど無事なんだね? 」
正直かなり危なかったけどね…。
「なんとか無事ですよ。アイツが銃を持っていたんで虚を突かなきゃ俺があんな感じで殺られてましたよ……」
そういって路地の奥で頭を撃たれ息絶えている運び屋を指差す。
「申し訳なかった……。それより、クリーニング代と代わりの服を用意するから、ひとまず銭湯に行って身体を洗ってこよう、ゴミ箱に入っていたからか臭いが凄いぞ」
確かに酷い悪臭だ……。制服、クリーニング間に合うかな?
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