SECRET
「おっ、継坊、彼女か? 」
そういって商店街にある八百屋に行くと八百屋のおじさんが俺の肩を叩きながら笑っている。
「いやいや、俺みたいな冴えない奴が、こんなに可愛い娘と付き合えるはず無いじゃん…。この娘は生徒会の後輩だよ。それで、今日は生徒からの相談があって、もしかしたらおじさんがキーマンかと思ってさ」
そういってスマホで写してきた栄養士さんの帳簿を見せる。
「おじさんの新鮮な野菜をこれより安い値段で学校に卸してくれることって可能ですか? 」
そう尋ねると八百屋のおじさんは店の奥に居る奥さんに俺のスマホの画面を見せて話し始める。
「付き合ってって仕入の交渉に付き合ってってことだったんですね…。嬉しいと言えば嬉しいんだけど、ちょっと複雑だなぁー」
後ろで小春ちゃんが何か呟いているがハッキリと聞こえない。
「どうしたの小春ちゃん? 」
そう話しかけると小春ちゃんは顔を真っ赤にして店の奥で話している、おじさん達の所へ行ってしまうので俺も彼女の後を追って店の奥に行く。
「うーん、確かに学校に卸せるのは嬉しいけど、この値段より安くって言うとギリギリ黒字って感じで薄利多売になっちゃうわよ」
そういって奥さんが困った顔をしている。
「だけど、俺とお前が出会った場所だし、何より母校の後輩たちが頼ってくれてるんだぜ? ここで応えなきゃ男が廃るってんだ、確かに利益は少ないかもしれないが学生のみんなが親にウチの野菜が美味しかったって言ってもらえば宣伝にもなるから元が取れるはずだ」
そういって八百屋のおじさんが奥さんを説得している。
「お願いします。新鮮で美味しい野菜をみんなに食べてもらいたいんです。ただ、私達は生徒なので契約とかは出来ないです。なので先生たちに後のことは引き継ぎます。もし契約してくれて小島八百屋さんの野菜が食べることが出来たら嬉しいです。先輩、私達は帰りましょ♪ 」
そういって俺の手を握ると引っ張るように店を後にした。
「先輩、いくら何でも勝手に学校の内情を話しちゃいけないですよ! それに勝手に帳簿の写真を撮影してるなんて…。本当に馬鹿なんですか! 退学になったらどうするんですか! せっかく先輩の近くに居られるようになったのに! 少しは後のことを考えてから行動してください」
そういって泣きそうな顔で俺の腕をきつく抱きしめてくる。
「ダメだったのかな? 学校の為になることだと思ったんだけど? 」
そういうと小春ちゃんは溜息を吐いて俺を見上げてくる。
「悪いですよ! 校長先生に何も言わず勝手に交渉して、お金はよろしく! あとは知らないなんてことが本当にまかり通ると思ってるんですか? 先輩は順序を飛ばし過ぎなんです! 」
そういって俺の前に立ち正拳突きをしてくる。
「いっ、痛いよ。小春ちゃん…」
殴られたお腹を押さえながら小春ちゃんに抗議すると彼女は頬を膨らまして
「先輩の暴走を抑えられなかった私にも責任はあります。なので今回は火消しに協力します! 次は無いですからね! 先輩と連絡が取れないのでLINKのIDと連絡先を教えてください」
そういってスマホを差し出してくるので俺はIDと連絡先を小春ちゃんに教えて、小春ちゃんを家に送った…。
「じゃあね小春ちゃん、迷惑かけちゃってごめんね」
そういって玄関の鍵を開けている小春ちゃんの後ろ姿に向かって謝ると小春ちゃんは頷いて
「本当です。先輩は後先考えないで行動しちゃうし、美遥は先輩のことになるといちごジャムに練乳をかけたみたいに甘々だし…。仁比山先輩に至っては、お嬢様だから金銭感覚が皆無だし…。七緒先輩は、ちょっと抜けちゃうところがあるんだけど、そこが可愛いんですよね」
今の発言を聞く限り、問題児ばっかりの生徒会じゃねぇーか…。
「本当に申し訳ない、もっと頑張るよ…(俺がもっとしっかりしねえとマズい)」
そういうと小春ちゃんは笑顔で振り返り
「約束ですよ先輩♪ あっ、あとでLINKしますね♪ それじゃあ先輩、お疲れさまでした」
そういって彼女は家に入っていった。
【小春サイド】
ヤバい、まだ心臓がバクバクしてる…。私、赤くなってなかったよね? そんなことを思いながら私は頬を触れる。
「うん、大丈夫みたい…。継先輩と放課後デート? なのかな? 二人で商店街を歩けて良かったな♪ 先輩、私のこと覚えていてくれてるのかな? 先輩がこの街から引っ越す時にした約束のこと…」
そういってベッドに倒れ込み、私はLINKの画面を開いて先輩にメッセージを送ることにした秘めた気持ちを込めて。
あっ、小春ちゃんからLINKが着た。
【メッセージ】
すみませんでした。
きついことを言ってしまって
でも、先輩のことを思って言いました。
すいようび(明日)先生に相談しましょう
。
何で句読点が最初にきてるんだ? 焦ってたのかな? とりあえず返信しないと…。
【了解、先生に明日相談しよう! 】
そう返信して俺は美遥の待つ家に急ぎ足で帰る。
「あっ、おかず買って帰らなくちゃ」
そのあと俺は商店街のお肉屋さんでメンチカツと肉じゃがを買って帰ることにした。
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