コネクト

 生徒会室の中に入ると2人の女の子が席に座っている。

「久しぶり継、私のこと覚えてるかな? 」

 そういって白髪の少女が手を振ってくる。

 白髪…?

「もしかしてミシェルか? 俺の知り合いで白髪は桜庭・ミシェル・ナオしかいないけど…。男だと思ってたんだけどナオって女だったのか? 」

 そう尋ねるとナオは笑って頷き

「最後にあった日に言ったじゃん、ナオって漢字で書くと七緒だって…。まぁいいや、改めてよろしく、継」

 そういって七緒が手を差し出してきた。

「あぁっ、こちらこそ…。っていうのも何か違和感あるな、ただいま七緒」

 そういって差し出された手を握り返すとお互い笑ってしまう。

「あぁーっ、もう話が逸れてますよ。彼に話があるんですよね? 」

 もう1人の女の子が、そういって七緒のことを見つめている。


「あっ、そうだった…。継、生徒会に入らないかい? 」

 そういって俺を見つめてくる。

「なんで俺を生徒会に? 」

 不思議に思い七緒に尋ねると彼女は微笑んで

「継が、人一倍正義感があって誰に対しても優しい奴だってことを知っているからね♪ だから私達と一緒に生徒会活動をしないか? 」

 七緒がそういって微笑みかけてくる。

「うぅーん、すぐには返事が出来ないな…。少し考える時間が欲しい…。でも今日は七緒に会えて嬉しかったよ」

 そういうと七緒の後ろにいたもう一人の女の子が驚いた顔で俺を見つめている。

「えっ、断るんですか? この学園の生徒なら喜んで入るはずなのに…。先輩はバカですか? それとも、もしかしてホモ? 」

 バカは別に良いけど何故ホモになるんだ? 不思議に思い、尋ねることにした。

「何故、ホモ扱いされるんだ? 生徒会の加入とホモって関係あるのか? 」

 そう尋ねると彼女は頷く。

「だって可笑しいでしょ、内申点も上がるし、清櫻の白百合って崇拝されてる超絶美人の七緒先輩が居るんですよ! それに今期の生徒会の役員は全員女の子で可愛いんですよ? 普通の男なら喜ぶはずなんです」

 そういって女の子は俺のことを指で差してくる。

「いや、可愛いって言われても…。美遥は従妹だし、七緒に関しては男だと思ってた相手が女の子だったって言われて、心の中で整理出来て無いし…。君と仁比山さんに至っては何ひとつ知らないからね? それで喜ばないのが可笑しいって言われてホモ扱いは無いでしょ…」

 そういうと女の子は頷いて納得してくれるが不服そうに俺を見つめてくる…。


「とりあえず話がそれだけなら帰ってもいいかな? 」

 七緒に、そう声を掛けると彼女は少し考えて頷いてくれた。

「じゃあ帰る、お疲れさ…」

 お疲れ様と言って帰ろうとしたら後ろから抱きつかれる…。

「ダーメーでーすー、おにぃにはお仕事を手伝ってもらいますぅ」

 そういって美遥が俺の背中を押して生徒会室に入っていく…。

「お仕事って…。お前、俺はまだ生徒会役員になってないからな? 役員になってないのに仕事を手伝っちゃマズいだろ」

 そういって首を傾げて他のメンバーに確認すると七緒の一言で手伝いが決まってしまった…。


「試用期間で良いんじゃない? 」


「それで最初の手伝いが隣の生徒相談室の掃除ってどういうことだよ…」

 そういって他の生徒会メンバーを見ると彼女達は頷いて親指を立てている。

「お掃除には男手が必要だからね♪ 」

 美遥は笑って、持っている箒と雑巾を渡してくる。

「そうですよ鷺ノ宮さん、私達だけだと1週間以上掛かっちゃうんです♪ 重い物を持つには4人揃わないと出来ないから…。その点、貴方が居れば最低3人居ればいいから、助かります」

 そういって仁比山さんはマスクとゴーグル・エプロンにハタキと完璧な装備をして扉の前に立っている。

「先輩、この先はコレ(マスク)を装備しないと地獄DEATH(です)よ」

 そういって俺をホモ扱いしてきた美濃口みのぐち小春こはるちゃんが使い捨てのマスクを差し出してきた。

「さあ皆(スコーッ)掃除を(スコーッ)始めよう(スコーッ)」

 七緒(コイツ)に関しては何故ガスマスク? とか、何処から持ってきたんだよとか、色々ツッコミを入れたいけど面倒な事になるからやめておこう…。


「ありがとう美濃口さん、参考程度に聞くけどこの扉の向こうを掃除するのは、いつ以来? 」

 そう尋ねると仁比山さんが【生徒会の記録】と背表紙に書かれているファイルを持ってくる。

「あっ、あった! えぇーっと、このファイルの記述通りだと最後に掃除をしたのは9年前? 」

 何故に疑問形? しかも9年前って…。今までの生徒会は何をしていたんだ…。

「ねぇ(スコーッ)それより(スコーッ)このガスマスクに(スコーッ)誰も(スコーッ)ツッコまないの(スコーッ)」

 ツッコミ待ちしてたのかよ…。

「いや、七緒先輩は清櫻の白百合ですから、汚部屋掃除には、必要ですよ? むしろ先輩は部屋で待っていてほしいです」

 美濃口(コイツ)はボケ殺し&過保護(主に七緒に対して)だということが分かった。

「そっかー、そんなに言うなら部…」

「休ませませんよ? 小春ちゃん、七緒ちゃんをサボらせないでください」

 仁比山さんはしっかり者で生徒会のオカンみたいな立場だということが分かった。

「ちょっ、待って! 分かった、分かったからアイアンクロウだけはやめて! 美波の地味に痛いんだよ」

 七緒は昔と違って活発になって可愛くなってる。

「おにぃ、なにジーッと見てるの…。おにぃの変態! おにぃは、さっさと掃除する」

 そういって、何故か頬を膨らました美遥に背中を押されて俺は9年間も掃除をサボっていた生徒相談室に放り込まれる。

「ゲホッ、ゴホッ」

 生徒相談室の中に入ると予想以上に埃が舞い、咳き込んでしまった。

「大丈夫おにぃ? 」

 心配するんだったら放り込むなよ…。

「うわっ、凄いですね…」

 美濃口さん、凄いと思うならハタキでパタパタ叩くのを一旦やめようか…。

「ちょっと、一度部屋から出ましょう」

 仁比山さん、ナイス判断!

「やっぱり(スコーッ)これが(スコーッ)必要だね(スコーッ)」

 だったら全員分用意しろ!

 一度、相談室の外に撤退して作戦を練ることにする。


「埃スゴイよね…。どうしよっか? 」

 そういって美遥が俺のことを見つめてくる…。萌木家に来てから2か月間、掃除、炊事洗濯をこなす主夫っぷりを見られているので俺に尋ねてきたのだろう。

「そうだな、あそこまで埃が溜まっていると窓を開けるのは逆効果だな…。とりあえず俺が一人で入って箒とちり取りで目立つ埃を排除して荷物とかを片方に寄せるから、そしたら掃除機と水拭き用の雑巾を持ってきて」

 そういって俺は相談室の中に入っていく。

「ちょっ、ちょっと待ってください!鷺ノ宮さんにだけにやってもらうわけにはいきません! 私も! 」

 そういって仁比山さんは何もないところで転びそうになってしまう。

「危ない! 」

 そういって咄嗟に支えたのは良いけど手が柔らかいところを揉んでしまっている…。

「ふぇっ…」

 仁比山さんは目をまんまるにして俺の顔を見つめた後、自分の胸を見つめる…。

「大丈夫ですか? (パッと見、そんなに大きくないと思っていたのに、そこそこあって柔らかい…。って俺! そんなことを考えるなよ! )」

 心の中で自分自身にツッコミを入れてキョトンとしている仁比山さんに話しかける。だけどまったく反応が無い…。

「本当に大丈夫? 」

心配になり顔を近づけると彼女は頷いて頬を赤らめる。

「ちょっとボーっとしちゃってました…。それより手を離してくれるとありがたいのですが…」

 そういってモジモジ動くから胸を揉みしだく感じになってしまい仁比山さんが、はぁはぁ言っている…。

「なんだか自分以外の人に揉まれるとドキドキしちゃいますね♪ 」

 俺もかなりドキドキしてます。

「とりあえず俺一人で掃除をするので出て行ってください」

 そういって仁比山さんを引き剥がし、外に追い出した…。


 その後、テキパキと掃除をこなして綺麗にし終わるころには日が暮れかかっていた。

「マジかよ、昼間に掃除を始めたのにもう夕方かよ…。夕飯の食材、何も買ってないのに」

 溜息を吐いて帰る仕度を始める。

「ありがとう、継って本当にすごいね♪ まるで魔法を使ってるみたいに綺麗になっていってビックリしたよ。何かコツでもあるの? 」

 そういって七緒が俺のことを見つめてくる。

「でしょ♪ おにぃは洗濯・掃除・炊事、何でも出来る女子力MAXのおにぃなんだよ」

 何で美遥が誇らしげに答えてるんだよ…。それに、何でもじゃない裁縫は苦手だ。


「あっ、澪川さんに但馬のプリントお願いしたままだった…。クソッ、帰りたいけど澪川さん探さなきゃ…。仁比山さん、澪川さんが居そうな場所分かる? 」

 同じクラスの仁比山さんに聞くと何故か七緒の方が答えてくれた…。七緒いわく

『たぶん澪川さんなら調理室じゃないかな? 彼女、家庭科部の部長だし…』

 とのことだったので俺は美遥を先に帰して一人で調理室に向かうことにした。

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