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「そう言えば、ときどき志麻がお世話になっているみたいだね」

「え? えぇ時々。常盤さんとのデートの前に」

 志麻は常盤さんの愛娘だ。結婚後ようやく授かった娘と言うこともあり溢れんばかりの、いやダァダァと溢れるほどの愛情を注いでいる。そして女子大生の娘も父親大好きでよく仕事終わりにデートをしたり、うちの店に来てくれたりする。

 世の中の父親が羨ましがる関係性だ。俺も娘が生まれたらそういう風に育てたい。良く聞く『パパの入った後のお風呂は嫌っ!』とか言われたくないもん。まだ結婚もしていないけど。

「私の仕事が終わってからだとどうしても待たせてしまうことになるからね」

「常盤さんはお忙しいですもんね」

 IT企業の社長だし。

「忙しくないと志麻に何も買ってやれないからね。忙しいのはありがたいことだよ」

 こういうところも商売の上手い社長の秘訣なのかもしれない。驕ってないと言うか、いい意味で社長感がないって感じの。金持ち感は隠しきれなくて見た目や仕草で分かるけど。

「本当は今日も志麻とデートの予定だったんだけどね。実はさっき振られちゃって」

「え、振られたんですか?」

 あのパパ大好きな志麻が? 体調でも崩しているのか?

「んー今朝顔を見た時は元気そうだったんだけどね。夏バテもまだしていないって言っていたし」

「そうなんですね」

「どうしてだろう? お昼までは楽しみにしているようだったんだけどさ、おかしいね」

 心配しているというよりもどこが呆れたように笑みを零す。ちょっと(とは言い難いくらい?)ワガママな子だからそういう事も多いのかもしれない。気分屋、みたいな?

「それで、花菱君何か知っている?」

「え?」

 突然の質問につい間抜けな顔で返してしまった。なんでだよ。

「いいえ、女子高生の考えることはおじさんには分かりかねますから」

「花菱君がおじさんなら私はお爺さんじゃないか」

「そんなそんな、常盤さんはおじ様って感じがしますから」

 おじさんよりずっと上品で頭が切れて素敵な感じがする。俺とは全然違うから。

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