フラワーホールに青い花

カゲトモ

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「いらっしゃいませ」

 いつもの様に軽快に来店した人物を見て、いつもの様ににっこりと微笑む。大丈夫、俺は大人じゃないか。

「久しぶりだね、花菱君」

 常盤さんも変わらずプレイボーイな笑顔で返してくる。

「なかなか仕事が忙しくてね、飲みに来ることも出来なくて」

「それはそれはお疲れ様でございました」

「私はこう見えてもお喋りしながら飲むのが好きだからね、今日は癒されに来たよ」

 どう見てもそういう飲み方が好きそうだけどね。俺なんかが癒しになるのならいくらでもどうぞ。

「正直最近は得意先との会食やなんかでいろんな所でお酒を飲んで来たんだけれど、やっぱり花菱君の作るお酒が一番美味しいね」

「ふふ、ありがとうございます」

「信じてないね? 私が言うのだから間違っていないのに」

 どんだけ自信過剰なの。俺より上手い人なんてこの世界にごまんといるってのに。

「んーん、違うよ花菱君。誰が何と言おうが私自身が一番美味しいと感じたことは間違いないんだから。誰が否定しようが、私が一番だと思った事実は覆されない。君は私の中で一番のバーテンダーなんだよ」

 ・・・なんだよ、そんなキザなことサラッと言いやがって。でも誰かの一番になれることは嫌じゃないし。

「好きですよ、常盤さんのそういうところ」

 素直に尊敬できる。俺はひねくれ屋だから。

「なんだい改まって告白なんて嬉しいね。私も花菱君となら」

「あ、それは大丈夫なんで」

 俺は生粋のノーマルなんで。

「残念」

「残念がらないでください」

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