第99話 動き出した黄金騎士団 (現実)
「……直接メッセージを返信してくるんじゃなくて、本文に『黄金騎士』を登場させたか……これで俺は逃げられなくなった。こっちが試されてるってわけだ」
田澤は上機嫌に笑った。
そしてグループメールで同志に連絡を取った。
たざわ:「例の小説、今日の更新見たか?」
まーくん:「ああ、もちろん。おまえが送ったっていうダイレクトメッセージに対して、否定も肯定もせず、無視することもしないで、こんな形で事実上の返信をするとはな……大胆なのか、何も考えていないのか」
たざわ:「俺たちがグループで行動していて、みんなこの小説を読んでいるっていうのはバレているだろうな。その上で、こっちの出方を探ろうってわけだ。いきなりの話の転換に、多くの読者は困惑するだろうが、事情を知っている奴だけが反応を示す……それを狙ったんだ。しかも自分の素性は明かさずに、だ。ダイレクトメッセージの機能をつかってチマチマやりとりするのを嫌ったのかもしれないが……まあ、うまいやり方だと思うよ」
ゆきっち:「そうよね……頭いいのかも。ところで、この作者って一人なのかな?」
たざわ:「さあ……どうかな。あいつは意外と仲間が多いからな……」
ゆきっち:「え……あいつって、正体知ってるの?」
たざわ:「いや……確証はないけど、多分奴だろうっていうのには心当たりがある」
まーくん:「へえ、誰だ? 教えろよ」
たざわ:「いや、それは危険だ。そいつがそうだったとしても、違ったとしても、迷惑がかかることになる。それに、まさかとは思うが、こちらをおびき出すための罠かもしれない」
まーくん:「まさか……備前専務本人が、あの小説を書いているってことか?」
たざわ:「もちろん、それはあり得ないけど……たとえば、それに匹敵する、備前専務に敵対していた派閥の人間が集まって書いた小説だとしたら、どうする?」
ゆきっち:「えーっ、それって、なんか本格的にドロドロのドラマみたいじゃない! それはそれで面白いかもしれないけど、巻き込まれたくはないね」
まーくん:「いや、待て待て。あんなバカバカしい話、そんな大それた組織の人間達のものじゃあないだろ?」
たざわ:「いや……たしかに、そういう面もあるけど、それはわざと面白おかしくはぐらかしているだけだろう? 現に、社内のセクハラも減ったし、ヒステリックな女性社員もおとなしくなった。なにより、専務の失脚を狙うと宣言し、その通り実行し……そして復活を予言しているんだぞ? そんなこと、ただの一社員ができると思うか?」
まーくん:「そう言われてみればそうだな……たぶん、仲間がいるな。もし一人で小説の内容を全て実現させたのなら……この作者、天才か?」
たざわ:「どうかな……油断できない相手、または組織だとは言えるだろう。ただ、黄金騎士の件、警戒しながらも援軍を断らなかったところをみると、味方が増えて欲しいと願っていることだけは確かだ」
ゆきっち:「そうね……うん、私も協力する! 信用できる人に声かけて、仲間増やす!」
たざわ:「ああ、それでその作者か、そのグループのメンバーに行き当たればそれでよし、そうならなかったとしても、対備前元専務の強力な援軍を作り上げるんだ」
ゆきっち:「おっけー! 面白くなってきたね!」
まーくん:「やってやるぜ!」
――土屋達の知らないところで、黄金騎士団はその活動を活発化させていたのだった――。
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