ミス研£2222222222¥$°°°は人使いががが荒い荒い荒い荒荒荒

 8階に戻った僕らは、コンサートホールのチケット窓口の前で次のヒントを求めてキョロキョロしていた。


「もしかして、本当にコンサートを聴かないと分からないヒントかしら」

 と、津村先輩。

「いや。追加料金を払わないと得られないようなヒントはきっと出さないよ。それにコンサート丸々聴いたら1時間20分。時間が掛かり過ぎる」

 と、これは香川先輩。

「これをどう使うか、よねえ。私は何かに当てたら、穴から文字か数字が見えるんだと思うの」

 間村は穴開きカードをひらひらさせながらそう言った。その言葉にみんなが頷く。


「あ……! 」

 僕は気が付いた。

「どしたの京太郎」

「ポスター! 弦楽四重奏コンサートのポスター! 」

 四つの弦楽器を奏でる四人の奏者の周囲に無数の小さな音符がデザインされたその図案。よく見れば、音符に混じって平仮名や漢字、数字などの文字も混ざっている。そして、丁度ヒントの穴開きカードを当てがえそうな、正方形の四隅を示す三角形のマークも。


「間村さんっ。早く。早くカードを当てて見て! 」

「分かってます。えーと……」

 

 正方形の角を示すマークは2セットあり、上から順に当てがうことで、僕らは以下の文字列を得た


 十 五 人 の 詩 獣 た ち


「十五人の詩獣たち……? 」

「うーん……」

 僕と間村にはなんのことか分からない。

「詩人論集のサブタイトルだわ。河津聖恵の」

 迷いない様子でそう断言したのは津村先輩だった。かっこいい。その読書量が伝わる即答ぶり。

「詩人論集のサブタイトル……」

「じゃ、メインタイトルは? 」

 僕と間村の疑問にも、先輩は勿論淀みなく答えた。


「本のタイトルは、『闇より黒い光のうたを』」



***


 6階のクラフトコーナー。

 ブラックライト関連グッズの売り場に僕らは来ていた。


「あ! これねきっと! 」

 ブラックライトに照らされて、七人の小人の置物が置いてある。ご丁寧に、手に手に「7」の数字のオブジェを持って。そう言えば、さっき間村とこのコーナーを見た時も、同じように小人の置物は置いてあった。全く気にしていなかったけど。


「2番目の数字も7、ね」

「あと一つ。次のヒントはどこだろう? 」

 

 僕らは黒い布でカバーされた小さな展示ブースの周りを探し回る。


「京太郎! 見て! 」

 間村が示す小人の置物の底面。

 そこにはブラックライトに照らされて、蛍光グリーンの「g」が浮かび上がっていた。

「なるほどな。他の文字は? 」

「えーと、g、u、r、a……m、i 、で、最後は四角ね」

「四角? 」

「ほら」

 確かに、最後の小人の靴底に少し横長の長方形が描かれている。

 ぐらみ? 四角? なんのことだろう。

「ね、小人って英語でノーム? 」

「いや、白雪姫原作の表記では確かドワーフだった筈」

 僕がそう答えると、間村はにまぁっとそれは嬉しそうに笑った。


「私、分かっちゃった♬ 京太郎くん。君にはまだ分からないかねぇ、こんな簡単な暗号が」


くっ。何が悔しいって煽られてるのに間村の得意げな態度が可愛いくて、全く腹が立たないところだ。


「じゃ、次のヒント目指して移動よ。みんな付いて来てねっ」

 張り切る間村。僕は溜息を一つ付いて同意の返事をすると、彼女の後に付いて行こうとした。

 あれ? 先輩たちは?


 振り返ると、津村先輩が当たりを見回しながらまだ売り場にいる。


「先輩、どうしたんです? 」

「それが……香川くんがいないの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る