第122話 怪しい薬
翌日から早速かなたんには部下が与えられた。かなたんに与えられた数人の部下だが、よいよいさんが配慮したのか年配の人はおらず二十台半ばくらいの若いお姉さんの研究員ばかりだ。オレと同い年くらいの人もいるんじゃないか?
「む? またいやらしい目で女性を見ていましたね!?」
かなたんがオレを叱りつける。
「見てねえよ!?」
「嘘を言ってはいけません! まーた、鼻を伸ばしているじゃないですか!」
「そんなつもりはないんだが……」
「カズヤのスケベな視線があったら私の部下の研究員が不快になります。カズヤには外回りをしてもらいます!」
「外回りって……。別にこの研究室は営業なんてしてないだろ!? てかオレそんないやらしい目で皆さんのこと見てないですよね!? そうですよね!?」
オレはかなたんの部下のお姉さんたちに確認を取る。お姉さんたちは一瞬かなたんの方に視線を移してから苦笑いを浮かべていた。なんのサインだ、それは。
「たく、わかったよ。納得はできないが外回りに行ってくるよ!」
ま、どうせオレが研究室にいてもできることと言えば資料探しや荷物運び程度だろう。……それに、俺にはやることができたからな。外に出れるほうがいい。
「あ、夕方までには帰ってくるんですよ! 一緒に帰りますからね!」
オレは小学生か! とオレは突っ込もうかと思ったがやめた。小学生って言っても伝わらないだろうし。オレが研究室から出ようとする間際、部下のお姉さんたちはくすくすと笑っていた。いい年したオレがかなたんの言うがままに動いているからか? まったくなんなんだよ。オレは少しだけ不愉快な気持ちを抱きながら扉を閉めた。
「さて、情報収集といくか」
オレはそうつぶやきながら、マグイアの繁華街を探索する。目的はホワイトドラゴンの肉を食う以上に効率的なスキルポイントの集め方を見つけることだ。幸い、先日の魔法をぶつけられる人体実験で得た金がたんまり……とはいえないまでもそこそこ手元に残っている。……そういえば、かなたんにもうお金を貸してもらう必要はないと言うのを忘れていたな。夕方帰るときにでも話すか。
そんなことを考えながらオレは街の案内所に向かう。金を払う必要はあるが、ここに相談をすれば客のニーズに合った商店を紹介してもらえるらしい。オレは早速、安くはない額を払い、案内人に尋ねる。
「スキルポイントを効率的に集めたいんだけど、良い店知ってる?」
「……スキルポイントねぇ。ホワイトドラゴンの肉でも食べればいいんじゃない?」
「……それはもう知ってる。もっと効率的なものが知りたいんだよ」
「ホワイトドラゴンの肉よりも効率的なものってなると……もうあぶない橋を渡るしかないよ?」
「……どんな橋だよ?」
「……私から聞いたってのを内緒にしてくれるんなら教えてもいい」
「わかった。誰にも話さない。教えてくれ」
「色々な怪しい薬物を売っている裏の人間がいるんだ。いわゆる売人ってやつだ」
オレはゴクリと唾をのむ。……仕方ないよな。近道をするならリスクは伴うものだ。オレの防御力と治癒力なら副作用があってもきっと大丈夫。オレは案内人にその売人がどこにいるのか聞く。
「ここか……。思ったよりきれいな事務所だな」
オレは案内人に聞いた店を訪れる。扉を開いたオレは売人のおっさんに尋ねた。
「ここにスキルポイントを上げる薬があると聞いてきたんだが……」
「……正気か兄ちゃん。あんなもんを飲む気か!?」
「……ああ。オレにはどうしてもスキルポイントを貯める必要があるんだ……!」
「……わかった。用意するから待ってろ」
待つこと数分。おっさんが白い粉の入った袋を持ってくる。
「いいか。毎食後に決められた量を飲むんだ。……どうなっても知らねえがな」
「わかった。いくらだ」
「二百万エリスだ」
高いな。だが、背に腹は代えられん。オレは代金を払うと隠すように懐に入れてその店を後にした。
「毎食後、か。ちょうど昼飯時だな」
オレは大衆食堂で飯を済ませると、宿に戻って薬を取り出す。
……一体どんな副作用があるというのか。オレは緊張の気持ちとともに、薬を口に入れる。
「……まっずぅううううううううううううう!? ぺっぺっ!」
苦すぎるだろ!? なんだよこれ!? オレは薬の裏に書かれた文字に眼を通す。
『ホワイトドラゴンの肉を超濃縮したこのサプリメント。なんと小さじいっぱいでホワイトドラゴンの肉一キロと同等の栄養を得ることができます。※非常に苦い味がしますが、人体に影響はありません。また、効き目には個人差があります。効果が出ない場合でも当社は一切の責任を負いません』
「……は? もしかして怪しい薬ってのは、効き目があるか怪しいサプリメントって意味かよ!? は、はめられたぁ! ふっざけんなぁああああああ!!」
「うるせぇぞ! 静かにしろゴラァ!!」
隣室のおっさんの声にびくっとなりながらオレは声を静める。ちっくしょう。怪しい雰囲気出して売りやがって! ……でももったいねえな。オレはくっそまずいサプリメントを涙目になりながら口に運ぶのだった。
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