第113話 与えられた基礎研究
翌日から早速、オレとかなたんは研究所で働くこととなった。まあ、実務というか研究はかなたんしかできないからオレは雑用係だったんだけどな。
かなたんの仕事は与えられた基礎研究を進めることのようである。よいよい所長から直接研究の方向性を示されていた。隣で俺も聞いていたがなんのこっちゃかさっぱりだったぞ。どうやら、かなたんは俺の思っている以上に賢いらしい。
研究室に異動したかなたんは早速、研究に着手する。その横顔はどことなく楽しそうだった。
「やけに嬉しそうだな。かなたん」
「当たり前じゃないですか! 見て下さい。この魔法素材の数々をこれだけの素材は紅魔の村にもありませんでした。研究し放題ですよ!」
どうやらかなたんは研究室にあるきのこやら葉っぱやらを見て興奮しているらしい。
「そんなに凄いものなのか? オレには価値が理解できないが……」
「ええ。高価なものばかりですよ」
かなたんは目をキラキラと輝かせていた。多分、魔法使いらしい仕事ができることが嬉しいのもあるんだろう。
「それで、どんな魔法を研究するように言われたんだ?」
「魔力吸着素材の開発をしてほしいとのことでしたね」
「魔力吸着?」
「ええ。カズヤもゴーレムは知っているでしょう?」
「オレの知っているゴーレムがかなたんと同じかは知らないが……、岩の兵士みたいなやつのことか?」
「ええ、それのことです。ゴーレムと言うのは岩に魔力を注ぎ込んで動かすわけですが、元はただの岩。大量の魔力を注入することができるわけではないので、術者が離れたら長時間は活動できないのですよ」
「ふーん、そうなんだ」
「ゴーレムに限りません。魔力を物体に注入するというのは長時間の発動には向いていないのですよ。そこで、魔力吸着素材が活躍するというわけです。これをセットしておけば、吸着素材から魔力が任意の対象物に供給され長時間動くことが可能になるというわけです」
「電池みたいなものってことか」
「でんち? なんですそれは?」
……この世界には電池がないのか。まあ、そりゃそうか。電気よりも便利な魔法があるんだからな。
「なんでもない。忘れてくれ。で、その魔力吸着素材の改良をお願いされてるってわけか」
「ええ。でも、私が思うに魔力吸着素材はもう限界を迎えていると思うのです。もっと違うアプローチが必要でしょう」
「違うアプローチ?」
「ええ。吸着ではなく、魔力炉を作ってしまう方が良いんじゃないかというのが前々から私が思っていたことなのです」
「よくわからないが、まあ研究所の期待に応えることができるように頑張ってくれ。オレは魔法はからっきしだからな。もちろん、雑用は全力でさせてもらう。オレは自分のケツは自分で拭ける男だからな」
「別に私はカズヤがヒモ男でも困らないんですけどね」
「プライドの問題なんだよ」
「さ、始めますよ。まずは資料集めからです。カズヤ、研究所の図書室から魔法吸着の資料と論文をありったけ持ってきて下さい!」
早速かなたんから雑用を申しつけられたオレは図書室へと走るのだった。
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