第109話 美魔女

「ごめんくださぁい!」


 オレとかなたんは賢者の石の研究スタッフを募集していた研究所を訪れていた。研究所というだけあってそれなりに立派な建物だ。これなら月収五千万エリスという話もウソではなさそうだな。


「なんのご用事かしら?」


 建物の中から出てきたのはナイスバディのお姉さんだった。かなたんと同じく黒色の魔女服を着ている。露出の少ない服なのにスレンダーな体つきと豊満なバストが目についてしかたない。


「ギルドに張られた研究スタッフ募集の依頼を見てきました。この男はおまけです」

「おい、おまけって紹介はひどくないか?」

「依頼関係者をエロい目付きで見ている人間を仲間だと思われたくないですから」

「エ、エロい目付きで見てなんかねーし!」

「そんなに鼻の下を伸ばしておいてよくエロい気持ちはないだなんて言えますね」

「おい、まだ『頼られ好き』って言ったのを怒ってるのかよ? ただの冗談だったんだ。許してくれよ」

「そんなことで怒ってなんかいませんよ」

「じゃあ、なんで機嫌が悪そうなんだよ?」

「そ、それは……」

「はいはい、兄妹喧嘩は後でやってちょうだい」


 魔女服を着たナイスバディの美女は手拍子をパンパンと2回鳴らしてオレ達を諌める。


「兄妹じゃありません!」


 かなたんが大きな声で否定する。オレと兄妹と思われるのがそんなに嫌なのかよ。お兄ちゃんちょっと傷付くぞ。


「あら、そうなの? 仲が良さそうだから兄妹かと……。ま、いいわ。それじゃあ、研究スタッフとしての適性があるか調べさせてもらうわ。受けるのはそこの女の子だけで良いのね?」

「はい!」とかなたんは元気よく返事する。

「それじゃあ、帽子を取って顔を良く見せてちょうだい。というか普通、これから雇ってもらおうって人と話すときは帽子は取っておくものよ?」

「す、すいません」


 かなたんが帽子を外してかわいらしい顔を露わにすると、美女の表情が驚いた顔に一変した。


「あ、あなたもしかして……紅魔族?」

「はい!」

「そう、……久しぶりね……。同郷の人間と会うのは」

「同郷? もしかしてお姉さんも紅魔族なのですか?」

「ええ」


 美女は眉間に手をあて、指の隙間から眼を覗かせる。その眼は黒色から紅色に変化した。かなたんの眼もそうだが……この紅魔族ってヤツらの眼は本当に吸い込まれそうなくらい綺麗だ。


「私はかなたんといいます。お姉さんの名前は?」

「かなたん……良い名前ね……。わたしはよいよい、あなたに負けないくらい良い名前でしょう?」

「ええ! 素敵な美しい響きの名前です!」


 美女さえもそのネーミングセンスなのかよ……。紅魔族のヤツらの美的感覚はまじでわからねえ。


「紅魔族なら、大丈夫だと思うけど……、一応面接とテストは受けてもらうわ。入ってちょうだい」


 オレ達は美女の促すままに研究所の中へと足を踏み入れた。

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