第91話 注ぎ込んだスキル

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「ありがとうございます……。ウィズさん……。『【愛】を込めた』ってのはこのことだったんですね……」


 オレは暗闇の中、ウィズさんにお礼を述べる……。どうやら、オレはワルモンの爆発に巻き込まれ、大量の土砂で生き埋めになっているようだ。それなのにも関わらず、こうして苦しまずに生きていられるのは、防具から発せられている緑色の光がオレを守ってくれているのだろう……。ウィズさんは防具をオレに売った時、『愛を込めて作りました』と言っていた……。まごころ込めて作ったという意味でオレは受け止めていたが……、どうやら特殊な魔法をかけていてくれたらしい……。


 オレは少しずつ土砂を掻き出し、外を目指す……。ようやく、月明かりが見えた。地中から出ると、そこではワルモン達が、ノウレッジとぽいずんを『贄』にするなどというふざけたことを抜かしていやがった。ワルモン達がノウレッジ達の元に歩み出そうとするところでオレは「待てよ」と声をかける……。


 オレの声を聞いたワルモン達3人が振り向く……。オレが生きていることが信じられないらしく、驚いた顔をして問いかけて来た……。


「て、てめえ。なんでまだ生きている!? それにその光は……?」

「さては貴様、また、珍妙で厄介なスキルを新たに習得しおったな? ヘクセライのファイナル・エクスプロージョンが発動する間際、冒険者カードを触っていたからな……!」


 イービルが口を開く。全く、隙のない奴だ。あの、巨大魔法を放つタイミングでもオレに注意を払ってるとはな……。


「さすがは、第一司祭様だな……、良く見てくれてるぜ……。だが、残念だったな。それは見当違いだ……」

「見当違いだと……? 貴様、図星だからと言って嘘を吐……」

「嘘じゃなさそうだなぁ。兄ちゃんよう……」


 デモンズが「嘘を吐くな」と言いかけたタイミングで、ワルモンが言葉を被せてきた。


「その魔法はとびきり有能な魔法使いしか使えねえ術のはずだ……。防具を身に付けた者が瀕死に追い込まれた時に発動し、その者の生命を守るために一定時間全てのダメージを無効にする強力な魔法……。魔王軍では幹部のリッチーしか使えなかった魔法だ……。てめえ、どこでそんな防具を手に入れやがった?」

「お前らに言うと思うか……?」

「……まあいい……。で、どうするつもりだ? またお得意の『勝ったつもり』か? 学習しねえ野郎だ……。てめえの攻撃力じゃあ防御力を上げたオレ様には傷一つ付けれねえんだぞ? おまけにてめえは今、剣すら持ってねえ……。クク、そのダメージ無効の魔法が解けた時……それがてめえの最後だ……」


 ワルモンは勝ち誇った顔でオレを見下す視線を向ける……。確かにこいつの言うとおりだ……。オレの攻撃はこいつには通用しない。そう、さっきまでのオレならな……!


「良いことを聞かせてもらったぜ? ワルモン……。実を言うとオレはこの防具にかけられた魔法の詳細は知らなかったんだ。だが、お前の言うことが本当なら……、オレは何の気兼ねもなく新たなスキルを使用できる……!」

「新たなスキルだと……!? やはり貴様、あのタイミングでスキルを習得しておったのか……」

「ああ……。見せてやるよ! オレのありったけのスキルポイントを注ぎ込んだスキルを……。……ワルモン!!」


 オレはワルモンを呼び付ける。不機嫌そうな顔で「ああ?」と反応した奴にオレは見下す視線を突き返してやった。


「教えてやるよ……。能力の変化がお前の専売特許じゃないってことをな……!」

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