このくだらない世界に復讐を……

第88話 ファイナル・エクスプロージョン

「まずはウチから行く！」

　ぽいずんは毒壺から煙状の毒をワルモンに向かって飛ばす……。ワルモンはたちまち、緑の霧に包み込まれる……。

「ちっ！　毒か……」

　ワルモンは素早く霧から飛び出す……。

「何をするつもりか知らねえが……じいさん、てめえを先にやらせてもらうぜ？」

　ワルモンは呪文を唱えるヘクセライに視線を移すと、足元に転がっていた手頃な大きさの岩を持ち上げ、ヘクセライに向かって投げつける……！

「クリエイト・ロック！」

「ああ！？」

　ワルモンが投げた岩に別の岩がぶつかり、双方とも砕け散る……！　ノウレッジが魔法で岩を飛ばしたらしい……。

「片腕のくせに無茶するじゃねえか、兄ちゃんよう……。……先に殺されたいのはてめえみてえだなあ！！」

　ワルモンは狙いをノウレッジに変え、片足だけでの高速移動を始める……。

「そこだ……！　クリエイト・ウインド！」

「なに！？」

　ワルモンは魔法でのカウンター攻撃を喰らいそうになる……が、寸前でかわしたようだ……。

「てめえ……。オレの攻撃が見えるのか……？」

「ええ……。動体視力を上げるスキルを行使させてもらいました……」

「クク、そんなスキルを持ってたのか……。さっき使っていれば、腕を失うことはなかったかもなあ？」

「そうかもしれませんね……。……はああああっ！」

　ノウレッジは左腕に持った杖に魔力を込める……。杖に光が集まり、鋭く尖る……。まるで光の剣だ……。ノウレッジはワルモンに斬りかかる……！

「て、てめえ、なんだそのスピードは……？」

　ノウレッジはすごい迅さで光の剣を振り続ける……。デモンズが繰り出していた神速の斬撃に勝るとも劣らない速度だ……。ワルモンはダメージこそ受けていないが……防戦一方になっている……。

「……やはり、予想通りだった……。お前は筋力、防御力、敏捷性の能力を上げることができるようだな。だが、上げることができるのはそれらの内、ひとつのみ……。つまり、私が攻撃し続ければ、お前は防御を上げつづけるしかないということだ……」

　……ノウレッジの奴、一度攻撃を見ただけでワルモンの能力を見抜いたのか！？　オレは何度もダメージを喰らってやっと気付いたってのに……。嫉妬を覚えてしまうくらいの涼しい頭を持ってやがる……。

「……今日は不愉快な日だぜ……。人間ごときに……それも二人も、オレの能力の正体に辿り着くとはなぁ。だが、てめえも、あの『贄』の兄ちゃんと同じだ……。見抜いたところで何になる？　てめえにオレは殺せねえ……。てめえが力尽きてその速度で攻撃ができなくなった時、それがてめえの最後だ……！」

「確かに……。私ではお前を殺せない……。だが、忘れていないか？　私の役目は時間稼ぎだということを……！」

「ああ……？」

　オレはヘクセライに視線を移した……。……ビリビリと凄い魔力を感じる……。まともな魔法を使えないオレだが……、ヘクセライがその身に貯めている魔力の異常さは本能で感じ取ることができた……。

「ちっ！　面倒なことしやがって……！　……ここだ……！」

　ワルモンはノウレッジの一瞬の隙を見逃さず、攻撃をかわし、跳び退いて距離を取る……。同時にヘクセライの方に体を方向変換させ跳びかかる……！

「させん……！　クリエイト・サウンド！」

「ぐっ！？　なんだ、この音は！？」

　ワルモンは突然耳を押さえて苦しみ出す……。おそらく、ノウレッジが魔法でワルモンに不快な音を聞かせているのだろう……。オレには全く聞こえないが……。

「よくやってくれた……。ノウレッジ殿……、ぽいずん……！　はあっ！」

　ヘクセライが気合いを入れると……、オレの体を守るように半円状の光の壁が現れた……。俺だけではない。ノウレッジ、ぽいずん……。デモンズやイービルにまで……。各々に光の壁が施される……。ワルモンを除いた全ての者に……。

「準備は整った……。ワシの最強魔法を貴様に喰らわせてやろう……！」

　ワルモンの足元に巨大な魔法陣が展開される……。

「アクシズ教でもエリス教でもなんでも良い……。もしも、神がいるのなら……この悪魔を倒すだけの力をワシに与えよ……！　代償にワシの命を捧げん……！　ファイナル・エクスプロージョン……！」