第87話 ワルモンVS3人の十司祭 その2
「さーて、今度こそ、次は穣ちゃんの番だ……!」
ワルモンは握り拳を作り、体勢を整える……。ぽいずんに殴りかかる……、まさにその時だった。
「ファイアーボール……!」
ワルモンに火球が襲いかかる……。放ったのは……ヘクセライだ……。
「ああ!? じいさん、てめえ、まだ生きてたのか……。クク、まあ無事ではねえみてえだがなぁ……」
ヘクセライは腹部を押さえている。大量の血が流れているのが見えた……。顔色も悪い。そう長くは持たない……その判断をするのに時間はいらなかった。
「ファイアーボール……!」
ヘクセライは何発も火球をワルモンにぶつける。
「ちっ! 鬱陶しいことしやがって……!」
ワルモンはファイアーボールを避けることなく、受け止める……。ダメージを受けている様子は見られない。だが、それでもヘクセライはファイアーボールを撃ち続ける……。ワルモンは火球の煙で覆われた。
「今の内じゃ……。ぽいずん! ノウレッジ殿に回復魔法を……」
「わ、わかった!」
ぽいずんはノウレッジとともに、ワルモンから距離を取り、ノウレッジに回復魔法をかける……。
「ご、ごめんなさい……ウチのせいで……。……ウチの回復魔法じゃ、血を止めるので精いっぱい……。腕を繋げることは……」
「か、構いません。気にすることはありません。血を止めていただけるだけでもありがたい……」
血は止まったが、痛みは残り続けているのだろう……。ノウレッジは、肩口を押さえたまま、立ちあがる……。ヘクセライは火球を打つのをやめ、煙が晴れるのを待つ……。次第に煙からワルモンのシルエットが浮かんできた……。
「おいおい、てめえら、そんなボロボロになっても立ちあがるのかぁ? クク、勇気と無謀は違うんだぜぇ?」
ワルモンは煙から出てきながら、どこかで聞いたような言葉を3人に向かって投げる。
「化物め……」とヘクセライがつぶやく。
「褒め言葉として受け取っておくぜ? じいさんよう……。さて、ここまで生き残れたご褒美だ。誰から殺してほしいんだ? 選ばせてやるよ……」
「ふざけおって……。……ノウレッジ殿……、ぽいずん……。時間を稼いでくれぬか……。わしに時間をくれ……」
「なにか、策があるのですか……? ……わかりました……。可能な限り、足止めしましょう!」
……3人はまだ闘うつもりだ……。何やってんだオレは……。考えろ。オレにできることを……。……考えるまでもないか……。もう、なりふり構っていられない……。……オレは此の期に及んで、まだスキルポイントをケチっていたんだ……。デス・フェロー習得のために……。……仕方ないだろ……? あんな……ワルモンなんてバケモンがいるなんて思ってもいなかったんだ。それに低級スキルは全て習得していたし……。なにより、『あのスキル』はオレの長所を奪い取るものだ……。取得する意味がない……。十万ポイントもするしな……。……全部、言い訳だな……。……現実は……またオレの判断ミスで傷付かなくて良かった人間が傷付いてしまったということだ……! 目を背けるな……!
オレはスキルを習得するため、胸元から冒険者カードを取り出そうと体を動かす……。
「うぎっ!?」と自分でも情けなくなる呻き声がオレの口から出て来る……。少し体を傾けるだけでも激痛が走る……。それでも、動きを止めるわけにはいかない……。あの3人が闘ってくれている内に、スキルを習得しなきゃいけない……!
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