第85話 歯向かう十司祭

「くく、なぜ、魔王軍残党と手を組んでいるのか、だと? 聡明なノウレッジ殿に説明など不用であろう……?」


 デモンズは不敵な笑みで顔を歪ませる……。その態度を見たノウレッジは疑念が確信に変わったのだろう。怒りをにじませながら声を出す……。


「……全ては、そこの魔王軍残党とワルモン教のマッチポンプだったということか……! ふざけるな! スルアムの住人は魔王軍残党を追いだしたのが、ワルモン教だと信じているからこそ、今のワルモン教の悪政に堪えているのだ……。少なからずワルモン教に救われた恩を感じているから、皆、涙を飲んでいるのだ……! それが……こんな……」

「……本当に気付いていなかったのか? ノウレッジよ……。聡明な貴様なら、とっくに気付いていると思っていたのだがな……」

「……イービル……、あなたの言うとおりだ。全く気付いていなかったわけではない……。何かがおかしい、とは思っていた……。私が第三司祭になれてしまうような戦力しか持たないワルモン教が魔王軍残党を追い払えるほどの力を有しているとは考えづらい……。だからこそ、なにか奥の手をワルモン教は隠しているはずだと確信していた……。まさか、魔王軍残党そのものがワルモン教だとは……! ……その一線だけはワルモン教とはいえ、超えることはないと信じていた……信じたかった……。同じ、人間として……」

「フ……、所詮は貴様もこのスルアムの住人であったということか……。愚鈍なアクシズ教徒であったわけだ。残念だよ、ノウレッジ。貴様は本当に優秀であったからな。ここで失うことになるとは……」


 デモンズは神妙な面持ちでノウレッジに話しかけていた……。デモンズにすれば、ノウレッジはワルモン教に反旗を翻しかねない危険因子ではあったが、それでも有能な人材だと認めていたということか……。


「逃げ……るんだ……。ノウ……レッジ……。お前が死んだら、誰がアクエリを守るんだ…………!」


 オレはなんとか声を振り絞る……。しかし、ノウレッジが逃げることはなかった……。


「カズヤ殿……。折角のご忠告ですが……、私は逃げることはできません。魔王軍の残党と組んでいたワルモン教……、そのワルモン教の肩棒を担いでしまっていた私には、こいつを片づける責任がある……!」


 ……何、頑固なことを言っているんだ……! と叫びたかったが、ノウレッジの気持ちを推し測れば……、それ以上、止めることはできなかった……。


「あぁ? 男前の兄ちゃんよう。こいつを片づけるってのはオレ様のことか? 随分舐めたことを言ってくれやがるなあ! ……後ろのじいさんと穣ちゃんもオレ様と闘うつもりかぁ?」


 ワルモンはプレッシャーの矛先をヘクセライとぽいずんに向ける……。


「……ワシも魔王軍残党と組んでまで魔導の探求をしたいと思うほど腐ってはおらんさ……」

「……ウチは、魔王軍残党との戦争でお父さんとお母さんを失った……。だから、魔王軍残党を追い払ってくれたワルモン教に入信したんだ……! ワルモン教が魔王軍残党と仲間だったっていうなら、ウチはワルモン教を潰す……!」

「ククク、オレ様も舐められたもんだぜ……。デモンズちゃんよう、こいつら殺しても良いよなあ!?」

「……有能な人材ではございましたが……、ワルモン教に……ましてやワルモン様に歯向かうというのであれば……、残念ながら始末するしかありますまい……」

「と、いうことだそうだ……。てめえら3人はここで終いだ……!」


 ワルモンは歯向かう十司祭3人の死を宣告した……。不気味な笑みで顔を歪めて……。

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