第83話 救うんじゃなかったのか、オレは!?
なんだ? なにがどうなったんだ? 手足が動かせない……。視界も真っ暗だ……。
「どにに行きやがった? 兄ちゃんよう!」
……ワルモンの声がかすかに聞こえる……。同時になにか物を動かす音が聞こえる。工事現場で重機が瓦礫を動かすような音だ……。少しずつ、その瓦礫を動かすような音が近づいてくる……。最も大きな音が鳴った直後、満天の星空が視界に広がる。……ワルモンの邪悪な笑みと一緒に……。
「やっと見つけたぜえ? 兄ちゃんよう……!」
ワルモンはオレの胸倉を左手で掴んで持ち上げる。
「かはっ!」
……オレは喉に異物感を覚え、せき込む……。……空気とともに血がオレの口から吐き出される……。そして、失っていた感覚が取り戻されていく。……痛みの信号がオレの脳に到達する……。
「う、うぅうう、ぅう……」
オレは消え入りそうなうめき声を上げる……。力を振り絞り、周囲の状況を確認した……。……なんてこった……。室内が屋外になってやがる……。オレ達がいたワルモン教会は爆発で砕け散っていた……。爆発に巻き込まれたオレは瓦礫に押しつぶされていたらしい。そんなオレを、ワルモンはご丁寧にも掘り返して探していたということか……。
「はぁ。まだ生きてんのか、こいつ。タフにも程があるって話だ……」
「ワルモン様、お気をつけください。その男、私の電撃で黒焦げになったにも関わらず、復活したのです……! 並みの治癒力ではございません」
階段で地下に避難していたデモンズとイービルが顔を出す。イービルはワルモンにオレの治癒力について報告をしていた。
「あぁ。今、確認してる……。オレの爆発を喰らって瓦礫にも押しつぶされたってのに、まだ生きてるのも驚きだが……、千切れた左腕がもう生えてきそうだからな。この兄ちゃん、本当に人間か? オレ様達悪魔より、よっぽど化物じみてるぜ……。だが、さすがのこいつも虫の息だ。今、止めをさしてやるよ……!」
ワルモンは右手で手刀を作り、爪をオレの喉元に突きつける……。
「さすがのてめえも、頭と体を切り離せば死ぬだろ……? じゃあな。オレにここまでさせた人間はてめえが初めてだった。あの世で自慢すると良いぜ?」
……くそ、ここまでか……。……そういえば、忘れてたけど……、オレの目的は死ぬことだったんだ……。思ってた死に方とは違うが……、目的は達成されようとしている……。格好良く死ぬことは叶わなかったけど……、もう良いだろ、神様ども……。オレは全身の力を抜く……。死を受け入れようとした……。
「ヒャハハハ! 死ねえええ!」
ワルモンの手刀がオレに迫る……。その時だった。
(……信じます……。……私はあなたを信じます……)
オレの脳内にアクエリの声が響く……。……そうだ……。こんなオレを……裏切ってしまったオレのことを、許してくれたあの娘を救うんじゃなかったのか、オレは!?
「うあああああああああああ!」
オレは生気を振り絞り、ワルモンに向かってがむしゃらに剣を振るう……!
「こ、こいつ、まだ動けんのか!?」
ワルモンは驚いた様子でオレを手放し、距離を取る……。オレはその場にうつ伏せに倒れ込んでしまうが、ワルモンを睨みつけ、牽制した。オレはまだ死ぬわけにはいかない……! こいつらからアクエリ達を守り抜くまでは……!
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