第80話 不意討ち
「さあてと。そろそろ終わりにするか。兄ちゃんは人間にしては簡単に壊れなかったからな。良い食前の運動になったぜ。礼を言っとくぞ?」
ワルモンが小憎らしい笑みを浮かべる。オレの相手なんざ奴にとっては造作もないことらしい。余裕綽々といった様子だ。
「もう勝った気でいんのか? まだまだこれからだ……!」
「へえ……。兄ちゃん、まだそんな強がりを言えんのか。オレ様の動きを見切ることもできないってのに……。へへっ。良いねえ。ホントに活きがいい……。だが、オレももう腹が減っちまった。死んでもらうぜ? じゃあな……!」
ワルモンの超高速移動が始まる……。……と言っても、オレにその移動は全く見えない。オレが奴の姿を見つけた時、既に奴はオレの懐に入り込んでいた。
「本当に良い運動になったぜ? こんなに体を動かしたのは久しぶりだったからなあ!」
ワルモンはヒャハハハと不快な高笑いをしながらオレに殴りかかる……。咄嗟に剣で防御しようと試みたが、奴はオレの防御の合間を掻い潜り、拳を繰り出す……。
「あっ……、ぐあぁあああああああああああああああ!?」
ワルモンの拳はオレの腹部を突き破り、貫通する……。
「オレ様達、ワルモン教に楯突いたのがてめえの運の尽きだ……。折角の防御の才能だったのにもったいねえ野郎だ……。だが、心配すんな。オレ様が残さず食ってやるからよう。てめえの死はてめえにとっては勿体ねえが、無駄にはならねえからよ?」
ワルモンはオレの腹部から腕を引き抜く……。激痛がオレを襲うが……、声を出すこともできず、その場に倒れ込む。その時、司祭長室の扉が開き、一人の男が現れた……。十司祭の第一司祭……、イービルだ……。
「なんだあ? 次期司祭長のイービルちゃんじゃねえの。えらくボロボロじゃねえか。もしかして、こいつにぼこられたのか? 悪いがもうオレが殺させてもらったぜ?」
「ワルモン様! その者はまだ死んでおりません! お気を付け下さい!」
ちっ! イービルめ。余計なこと言いやがって……。
「ああん? 腹を貫いたんだぜ? さすがに死んでるだ……ろ?」
「あああああああああああああああああ!!」
オレは腹部に走る痛みを気合で我慢し、ワルモンの顔に目掛けてありったけの力で剣を振り抜いた……!
「なん、だとぉ!?」
ワルモンの不意を突いたオレの一撃だが、奴は素早く腕でオレの剣を防御する。
「ク、クソ野郎が……! オレ様に傷を負わせやがって……!」
奴の……ワルモンの腕からほんのわずかではあるが、出血を確認できた。この戦いで初めて奴にダメージを負わせることに成功する。……悪魔の血も赤いんだな……。
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