第79話 笑えない冗談
ワルモンはオレにそう言うや否や再び姿を消す……。まただ……。また、同じ技を使いやがって……!
「よう……」
背中側から声を掛けられる……。オレは寒気を感じながらも反応し、振り向く。そこにはワルモンのにやついた表情があった……。
「てめえ……。何回もオレの背後に回りやがって……。一体どんな魔法を使ってんだ?」
「おいおい、さっきも言っただろ? オレ様は種も仕掛けも持って無いんだぜ? オレはただ、高速で動いただけだ……」
ワルモンは話し終わると再び姿を消す……。オレも間抜けじゃあない。奴の姿が消えた瞬間に後ろを向き、剣を構える。
「おうおう、兄ちゃん、学習してきたじゃねえか。えらい。えらい」
「馬鹿にしやがって……。高速で動いただけだって? 嘘をつけよ……! オレは動体視力向上スキル『ダイナミック・ビジョン』を使用してんだ……! 見えないわけが……」
「おいおい……。舐められたもんだなあ。『ダイナミック・ビジョン』だあ? そんな低級スキルを行使されたからって、人間ごときにオレ様の動きを捉えられるわけねえだろうがよう!!」
「くっ! また!?」
ワルモンの姿が消えたことを視認したオレはすぐに背後を確認する。だが、そこに奴の姿はなかった……。
「おいおい、どこ見てんだ?」
オレは再び後ろを振り返る……。
「て、てめえ。どこに隠れてやがった?」
「ああ、悪い悪い……。兄ちゃんがあんまりトロいもんだからよう……。一度背後に回った後、元の位置に戻らせてもらった……。見えなかったかあ?」
「ぐっ!? ウソだろ……?」
「ああん? まだ疑ってんのかあ、兄ちゃんよう……! 特別大サービスだ。スピード落として動いてやるよ。その低級スキルで強化した動体視力とやらでよーく見とくんだなあ!」
オレは眼を凝らす。ワルモンの移動が始まる……。本当にかすかだが……、奴の動きの軌跡を確認することができた……。……できてしまったと言った方が良いのかもしれない。正直、魔法か何かの類であった方が良かった。……こいつは……ワルモンは本当に自前の肉体でこのスピードを出してるってのか……!?
「おーっと? その様子だとオレの姿が見えたみてえだなあ。ようやく信じたか? 魔法でもなんでもねえってよ。ちなみに今のスピードは最高速の半分にも満たねえんだぜ?」
今のスピードで半分以下だと? 笑えない冗談だ。……ふざけやがって……!
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