第74話 『称賛に値する』

 ゴブリン達はオレに委縮したのだろうか、攻撃を仕掛けてこようとしない……。


「ひゃはははは!」


 ワルモンはずっと笑い続けている……。いい加減、うっとうしいぞ……!


「いやあ、デモンズちゃんよう……。確かにこいつすげえわ……! このゴブリン共の力だったらその辺の中級者程度の冒険者なら一撃のはず、上級者でもただじゃ済まねえはずだ……。だってのにこの兄ちゃん、ほとんどダメージを受けてねえ。今までで一番活きのいい『贄』だぜ……!」


 そう言うと、ワルモンは手拍子を二つ、『パンパン』と叩くと、ゴブリン達に発破をかける……。


「おら、ゴブリン共、こいつに耐久戦で挑んだっててめえらに勝ち目はねえぞ? 一か八か全員でかからねえとな……。ほら、びびってんじゃねえ! さっさと攻撃しろ!」


 命令を受けたゴブリン達は一斉に、雄叫びを上げながらオレに向かってくる……!


「バインド!」


 オレは真っ先に襲いかかって来た一匹に拘束魔法をかけ、動きを封じたところで、殴り潰す……!


「ぎいああ!」


 気がつくと3匹のゴブリンが、オレの上半身めがけて跳び上がりながら棍棒を叩きつけてこようとしていた……。一匹は攻撃される前に叩きのめしたが……、残り2匹の攻撃は頭部と肩部に受けてしまった……。


「ぐっ、ああああ!」


 骨が軋むような激痛が走る……。しかし、怯んでは奴らの思う壺だ……。オレは痛みを堪えて、攻撃してきた2匹をどうにか叩き潰す……。


「ぎひひひぃ!」


 不気味な笑い声を出しながら、また別の1匹のゴブリンがオレの足にしがみつく……。


「くそがあ!」


 オレは足にしがみついていたゴブリンをフライパンでぶっ飛ばす……!


「ぎひひひひぃ……」


 足にしがみついていたゴブリンは断末魔の代わりに、最後まで笑っていた。まるで、計算通りだ、と言わんばかりに……。事実、オレは足にしがみついていたゴブリンに気を取られ、残り3匹のゴブリンへの注意が散漫になっていた。残り3匹のゴブリンはオレの背後から、両腕と首にそれぞれ一匹ずつしがみ付き、締め上げて来る……。……息ができねえ……。腕も動かせねえ……!


「んんんんんんんんん!」


 オレは窒息の苦しみに耐え、壁まで移動すると、自分の背中ごとゴブリンを体に叩き付ける……! なかなか背中にしがみ付いたゴブリンの力が抜けない……。だが、この程度の窒息の苦しみなんて、イービルの水責めに比べれば、なんてことはない……! オレは何度も壁にゴブリンを叩きつける。


「ぎゃぎゃ……」


 背中にしがみ付いていたゴブリンは脱力し、地面に落ちる。首絞めから解放されたオレは、今度は両腕にしがみ付いているゴブリンを腕ごと壁に叩きつける。


「なめてんじゃねえぞ! うりゃああああ!」


 オレは左腕、右腕にそれぞれしがみ付いているゴブリン2匹を交互に壁にぶつける。4~5発ほど、壁にぶつけただろうか……。ゴブリン達はオレにしがみつくのをやめ、床に倒れた……。


「はあ、はあ、はあ。やっと片付いた……」

「ひゃはははは! いいねえ、兄ちゃん! オレ様の護衛達を一人でやっちまうなんてなあ……。『称賛に値する』ってのはこのことを言うのかあ?」


 ワルモンが拍手をしながら話しかけてくる……。お前らに称賛されても何も嬉しくないがな……。オレは舌打ちでワルモンの言葉に答えた。

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