第73話 肉を切らせて骨を断つ
ゴブリン達はオレを囲むように陣形を整え、棍棒を構える。
「うぎぃあああ!」
一匹のゴブリンがオレに攻撃を仕掛けて来る。俺を殺せるのがうれしいのだろうか……、白目に剥かれた目と口が喜びの表情を作り出している。
「くっ!?」
オレはフライパンで奴の棍棒を受けとめる……。かなりのスピードだ……。そして、チビだってのに、異様に力が強く、その一振りは重い……。
「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
このゴブリン、力任せに棍棒を振り回しやがって……。オレは防戦一方だった……。奴の攻撃に隙が生まれるまで……待つしかない。幸い、こいつらは知能が低そうだ。全力でただ殴りかかってきているようにしか見えない。その内、スタミナ切れを起こすに違いない……。オレがそんなことを思考している時だった……。
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃあ!」
「な!?」
陣形を崩さず、その場で構えていただけだった他の9匹のゴブリン、その内の1匹がオレに襲いかかって来た……!
「ぐううう!」
オレはそのもう一匹のゴブリンの棍棒を腕でガードする……。めちゃくちゃ痛え……! 衝撃が骨の芯まで伝わってくる……!
「こ、こいつら……!」
「兄ちゃんよう……、そいつらをただのゴブリンだと思うなよ? 曲がりなりにも元魔王軍幹部候補のオレ様の護衛だぜ? 知能の高い奴ら集めてるに決まってんだろ?」
ワルモンがオレに声をかけて来る。奴の言うとおり、知能の低そうな見た目に反してこのゴブリンたちは、頭が良いようだ……。一匹ずつオレに殴りかかり、体力が落ち始めたら、次の一匹に交代する。そういう作戦を立てているらしく、それを実行している。
「デモンズちゃんよう、この兄ちゃん、防戦一方じゃん? とても強いようには見えねえぜ? まずかったらデモンズちゃんを食うからな?」
「ご安心ください。ワルモン様……。ご期待は裏切りません……」
デモンズとワルモンが何か話している……。だが、オレに反応する余裕はない。2匹目、3匹目、とゴブリン達はローテーションしながら、オレに攻撃を続ける……。拉致があかねえ……。だが、それならオレにも考えがある……。ホントは痛いからしたくない戦法だが、こいつら程度の攻撃力なら可能だ。
6匹目のゴブリンにローテーションが回ったとき、オレは戦法を実行に移した……。
「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃあ!」
ゴブリンは奇声を上げながら、オレの顔面に棍棒を振り下ろす……!
「おいおいおい……、デモンズちゃんよう……、あの兄ちゃん、ゴブリンの攻撃をまともに
「ふふふ、ワルモン様、ここからが奴を『贄』に選んだ真骨頂でございます。よくご覧ください……」
デモンズとワルモンの話声が聞えて来る……。……見せモンじゃねえぞ! オレはゴブリンの攻撃をまともに受けた……が、それこそが狙いだ。攻撃が終わったゴブリンは隙だらけだ……!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
オレはフライパンで目一杯の力で、ゴブリンの顔面を思い切りぶちのめす……! 肉を切らせて骨を断つ、だ!
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃあああああああああ!?」
ゴブリンは顔面が変形し、悲鳴を残して気絶する。姿かたちが異形であるからか、人間を殴るよりも、罪悪感は少なかった……。どうやら、このゴブリンたち、攻撃力はあるが、防御力はそれほどでもないようだ。
「ひゃははははははは!」
ワルモンの大きな笑い声が聞える……。なにが面白いんだ? 不愉快な笑い声だ……。
「うぎゃぎゃぎゃああああああ!」
別のゴブリンがオレに襲いかかってくる! 今度はオレの腹部に棍棒を叩きこんでくるが……、オレは受けとめると、1匹目と同じように頭部をぶん殴る……!
「あぎゃぎゃぎゃああ!?」
2匹目のゴブリンも奇声を残して動かなくなる……。
「はあ、はあ、次はどいつだ……?」
オレはゴブリン共を睨みつけ、精いっぱいのドス声を浴びせた……。
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