第62話 VS十司祭その3

「ムーブ・アース!」


 ノウレッジが魔法を唱えると、オレの足元の地面が持ちあがり、壊れる。オレは慌ててジャンプした……。


「いけませんよ! 不用意に飛び上がっては……。イービル殿とデモンズ司祭長は絶対にその隙を見逃さない……! クリエイト・ファイア!」


 空中で身動きの取れないオレに対して、炎の攻撃をしてくる……! かなりの威力だ……。イービルの魔法より強いんじゃないか!?


「さらに、クリエイト・ウインド!」

「な、なに!?」


 ノウレッジは炎に風をぶつけ、炎の威力を増加させてきた……!


「どうです? 初級魔法だけでも、組み合わせによっては威力が大きくなるのです! これが巨大魔法なら尚更です。お気を付けを!」

「クッソ!」


 オレは、ノウレッジに向かって距離を詰めようと走りだす! ……なんだ? 何か音が……! 咄嗟に耳をふさぐ! 大音量がオレの耳を襲う!


「クリエイト・サウンド……、不快な大音量を相手に聞かせる魔法……。あなたの五感は普通の人と変わりないようですね。こういった攻撃も十分考えられますよ……! ……クリエイト・ウォーター!」


 ノウレッジは明後日の方向に水を出した。何をするつもりだ?


「クリエイト・ウインド!」


風に煽られた水が嵐のような雨粒となってオレに降りかかる。が、大したことは……。


「さらに……、クリエイト・アイス」

「な!? うわあああああ!」


 雨粒がつららとなって、オレを襲いかかる……。鋭利なナイフで刺されたような激痛が走る!


「クリエイト・ファイア!」


 間髪入れず、今度は炎をノウレッジが繰り出す! が、先ほどのような威力のある炎じゃない……。


「この炎は、氷を溶かすためのものです……。あなたも、地面も水浸し。この状況で雷の魔法を使えばどうなるか……。結果は子供でもわかります。……サンダ―ボルト!」

「グッ、アアアアアアアアアアアア!」


 強力な電撃がオレの体に流れ込んできた。オレは堪らず、声を吐きだす。


「サンダ―ボルトは、威力は高いですが命中率の低い魔法……。ですが、今のように環境を整えることで、十分実戦にも使えるのです。イービル殿もデモンズ司祭長も自分に有利な環境を作るのが上手いお方……。覚えておくのです!」

「クッソ……!」

「……まだ、立ちあがれるのですか……。いえ、ほとんどダメージを受けていない……。それでいい。そうでなくてはアクエリは守れまい!」

「うおおおおおおおおおおお!」


 オレは再び、ノウレッジに向かって距離を詰めるため、一直線に駆ける!


「直線的な行動は相手に読まれやすいですよ。距離を取らせてもらいます。防御力の高いあなたと殴り合うのは得策ではないのでね。吹き飛びなさい! クリエイト・ウインド!」


 凄まじい風がオレを襲う。だが、対策は……ある……!


「バインド!」

「バインド? そんな魔法は私には効きませんよ!」

「アンタにじゃねえ。オレに掛けるんだ」

「なに!?」


 オレは自分の足と地面にバインドを掛け、縛り付ける。これで吹き飛ばされることはない。オレは少しずつノウレッジとの距離を詰める。


「クッ! クリエイト・サウンド!」


 再びオレに不快な大音量が襲いかかる。だが、関係ないな。気合で押し進むだけだ……! その後もノウレッジはオレとの距離を取ろうと色々な魔法を使うが、オレは強引に突き進む!


「なんというド根性だ……。頭を使って戦うことの重要性を教えようとしたのに……、真っ直ぐ突き破ってしまうとは……」


 十分にノウレッジに近づけたオレは、フライパンを振りかざす!


「おりゃあ!」


 オレの攻撃を受けたノウレッジはその場に倒れこんだ……。

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