第60話 VS十司祭その1

 この教会は、司祭長室まで行くのに、十の部屋を通らなくてはならないのだ。なぜ、そんな不合理な建物形態をとっているのか、理解に苦しむところではあるのだが、そうなっているものは仕方がない。オレは教会の中に入り、一つ目の部屋の扉を開ける。


「フフフ、待っていたぞ? 『人外』よ。私はワルモン十司祭、第十司祭、監視のサーベイ・ランス!」


 小太りの背の低いおっさん司祭が一人でオレを出迎える……。


「十司祭? 幹部のことをそう呼ぶのか……」

「そうだ! デモンズ司祭長様の配下に就く十人の幹部司祭……。それが我らワルモン十司祭だ……。覚悟するのだな!」

「ちっ! 超潜伏!」

「無駄なことを……。『究極感知』! ククク、見えるぞ、貴様の姿が!」


 な、なに!? オレの超潜伏を見破っただと!? これでは不意討ちができない!


「フフフ、どうだ、私の『究極感知』は……」

「く、くそ! つ、次はどんな手を使ってくるつもりだ?」

「え?」

「え?」


 オレ達二人は凍りつく。


「……攻撃してこないの?」

「い、いや、攻撃はいつも部下に任せてるし……」

「そ、そうか……」


 見破れるだけかい!? オレはサーベイの頭をフライパンで殴り、気絶させる……。


「スパイルドはこんなアホにも頭を下げないと行けなかったのかよ。同情するぜ。次の部屋だ」

――――第十司祭、サーベイ・ランス撃破――――



「ククク、待っていたぞ? 『人外』よ。我はワルモン十司祭、第九司祭、高速のフリート・フット!」


 ガリガリのおっさん司祭がこれまた一人でオレを出迎える……。


「オレの早さについて来れるかな? 『究極・敏捷強化』!」


 フリートはスキル名を言って動き出すが……、オレは難なく、フリートを捕まえる。


「な、なにい!?」

「アンタ、オレとスパイルドが戦ったのを見てないのか? ……見るわけないか……。スパイルドの方が倍は早かったぜ。後、動きが単調過ぎだ。スパイルドは緩急つけたり、ジグザグに動いたりしてたぜ? オラ!」


 オレに殴られたフリートは呆気なく、気絶する。……次だ……。

――――第九司祭、フリート・フット撃破――――



 次の部屋に入ると、机の上に置手紙があった。

『第八司祭、回復魔法のシキィ・ヨーク、司祭長室への呼び出しのため、不在』

「……次!」

――――第八司祭、シキィ・ヨーク撃破?――――



「待ってたぜぇ? 『人外』! オレ様は十司祭、第七司祭、力のパウワ! その辺のインテリ虚弱司祭どもとはわけが違うぜ? なんせ、オレは自警団、教徒兵を経て昇格した叩き上げ、だからなあ!」


 で、でけえ! なんだ、このオッサン、2メートルはあるんじゃねえか? パウワはオレに向かって拳を放つ! オレが咄嗟に避けると、パウワの拳は石畳の床に激突する。床は蜘蛛の巣状に破壊される……! なんてパワーだ!


「どうだ? オレの力は……? あれ? くっ、くっ。……腕が床から抜けねえ……」

「ええ……」


 パウワの間抜けな姿にオレは一瞬呆然とするが、すぐに切り替える。


「アンタ、インテリを馬鹿にするのは良いが、もうちょっと賢くならないとな! 手伝ってやるよ! オラア!」


 オレは思いっきりパウワの頭を殴りつける! パウワは悲鳴を上げて気絶する。


「こいつ、防御力はスパイルドより低いじゃねえか。典型的な脳筋か。でも、おかげで助かったぜ……。……次!」

――――第七司祭、パウワ撃破――――



「少年よ、わしの攻撃魔法に耐えられるかのう? わしは第六司祭、魔攻のヘクセライ……」


 ひげを長く伸ばし、司祭服のローブを深くかぶった老人がそこにはいた。


「フフフ、『人外の防御力』を持っていると聞いておるぞ? わしの攻撃が効くか、楽しみじゃわい……。受けて見よ! 我が最大の攻撃魔法、『エクスプロージョン』!」


 オレの周りの床が魔法陣に彩られる。ビリビリとした魔力が伝わってくる……。次の瞬間、オレの体が爆炎に包まれる……!


「ぐああああああああああああああ!」

「……やったか……?」

「クソジジイ……! めちゃくちゃ、熱かったぞ……!」

「な、なんと!? わしの全身全霊の『エクスプロージョン』が効かんじゃと……。はっはっは! 長生きはするもんじゃわい!」

「老人を殴るのは気が進まねえけど……。悪いが気絶してもらうぜ?」

「ふっ……。魔導の探求という抑えきれない欲望のため、十年前、この教会に身を置いた。あこぎな商売をしておるのだ。このような仕打ちを受けるのは致し方あるまい……」

「……そうかい……」


 オレは少しだけ、優しく爺さんを殴った。……次!

――――第六司祭、ヘクセライ撃破――――



「オレは第五司祭、束縛のレスト・レイント! オレの『バインド』はきついぞ? そらあ! って、え?」

「悪いな……おっさん。イービルに拷問を受けてから、その手の類の魔法を無効化するスキルはとっくに身に着けてんだ! ……殴らせてもらう」

「そ、そんな……」

 ……次……!

――――第五司祭、レスト・レイント撃破――――

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