第56話 デモンズの怒り
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――――ワルモン教総本山 スルアム教会 司祭長室――――
「ふむ。イービル殿。何の騒ぎかね?」
「は、デモンズ司祭長様……。例の『人外』が、一人で攻め込んできたようでございます……。自分は異常者だ、八つ当たりだ、などと意味不明なことを口走っているそうです」
「……なるほど、あくまで自分はアクシズ教と……、アクアリウスと無関係だ、と主張しようとしているわけか。愚かな。イービル殿、念のためだ。ワルモン十司祭に準備をするよう伝えよ。……アクアリウスも準備しておけ……。いざというときは奴を人質として利用する……」
「十司祭への連絡の件、承知いたしました……。ですが、その……アクアリウスの件なのですが……」
「どうした? イービル殿にしては珍しく、歯切れが悪いではないか……」
「は、大変申し上げにくいのですが……、先ほど、定期の巡回をしていた兵が、アクアリウスを捕えていた牢を確認したところ、すでにアクアリウスの姿はなく、代わりにシキィ・ヨーク司祭と兵2名が牢の中で気絶しているのを発見した次第でございます……」
「……道理で『人外』が好き勝手に暴れまわっているわけだ……。人質の心配が既にないということか……。ヨーク、あの色ボケめ……! 何たる失態だ……!」
イービルはビリビリと伝わるデモンズの怒りのプレッシャーを肌に感じ、すぐさま謝罪の言葉を口にする。
「も、申し訳ありません。デモンズ司祭長様! す、全てはこのイービルめの責任……。どうか罰を御与えください……!」
「イービル殿が罰を受ける必要はなかろう……。ヨークも十司祭の一人、自分の責任は自分で取らせよ。ヨークが目覚めたら司祭長室に来るよう伝えよ!」
イービルは了解の言葉を口にして、司祭長室から退室した……。
「『人外』が……! 調子に乗りおって……! ……最悪のケースも想定した方が良いだろう。もし、万が一、奴が司祭長室までくるようなことがあれば……、『贄』になってもらうのを早めるだけだ……!」
デモンズは怒りの表情を崩さず、強い口調で独り言を発していた……。
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