第52話 ……今度はもう少し優しくしてください……

「アクエリは本当に強いな……。そんなアクエリの姿を見るから、街のみんなもこのひどい状況の中で頑張ることができるんだな……」

「そ、そんなことないです……。カズヤさんが私の夢を思い出させてくれたから……。立ち直ることができたんです……」

「それこそ、そんなことねえよ。大したことをオレは言ってない……。オレが何も言わなくてもアクエリは自分ですぐに立ち直ったさ……」


 などと、会話をしている時に、オレは気づいた……。アクエリの顔色がいつもより良くなっていることに……。


「アクエリ、何かいつもより顔色が良くないか……?」

「は、はい……。そこで倒れてるヨークという司祭が私に『プラス・ヒール』とかいう回復魔法をかけてきたんです……。健康状態も本来の状態にする『ヒール』の上位魔法だとか……」

「回復魔法を……?」


 こいつ、なんでそんなことをしたんだ? 人質に死なれたら困る、とかそういうことだろうか……。オレは、もう一度、アクエリの顔色を伺う。どことなく、いつもより美人に見えた……。顔だけではない。スタイルもいつもより、色っぽく見えた……。って何、オレはこの状況で邪念に囚われてるんだ! しっかりしろ! オレは自分の頬を手で叩く。……アクエリの容姿はあの駄女神よりも美しく見えた……。アクエリは容姿も性格も、アクシズ教の創造主様を上回ってしまったらしい。


「それにしても……私、びっくりしました……。カズヤさん、突然、私のこと抱きしめるから……。ちょっと痛かったです……」

「はっ!?」


 オレは今更になって、自分がアクエリにした恥ずかしい行為を思い出していた。別にやましい気持ちがあったわけじゃない。ホントにただ、オレの思いを……、アクエリに復讐心を持って欲しくないという思いを伝えたかっただけなんだ! ……確かに、抱きしめる必要なないな……。なにをやってるんだ、オレは!?

 オレは慌てて弁解の言葉をアクエリに投げかける。アクエリは噴き出して笑い声を上げる。


「そ、そんなに慌てなくて大丈夫ですよ。気にしてませんから。……むしろ、嬉しかったです……。……今度はもう少し優しくしてください……」


 ……今度ってなに? 今度があるのか!? オレは顔に血が上るのを感じながらうろたえる……。


「か、か、からかうんじゃねえよ! と、とにかく、早くこの教会から脱出するぞ! ほら、オレの手を握るんだ!」

「え、な、なんでですか?」

「オレの『超潜伏』の効果をアクエリにも伝えるためだよ……。オレの体に触れればアクエリにも効果があるんだ。早く手を!」

「は、はい……」


 か、顔を赤らめるなよ……。ただでさえ、恥ずかしいのに、もっと恥ずかしくなるじゃねえか……。

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