第42話 誘拐任務の依頼
「ふむ。驚いているようには見えんが……まあいい。これから、君には民からの搾取や国の目を欺く手伝いをしてもらうわけだ。頑張ってもらいたい」
「はい」とオレは答える。
「さて、では入隊式は後日行うのだが……、取り急ぎ、君に任務を与えておこう……」
「は、どんな任務でしょうか?」
「君はアクシズ教を知っているかね?」
「ええ、かつてこの地で栄えていた宗教ですね?」
「そのとおりだ。我々、ワルモン教に楯突く、邪教だ……。フフッ、彼らにとっては我々の方が邪教であるだろうが……」
自分で言ってりゃ世話ねえな。どう考えても、ワルモン教の方が邪教だろうが!
「そのアクシズ教の教徒の一部が徒党を組み、我々に反旗を翻そうとしているそうなのだ」
そんなアクティブなアクシズ教徒がいるのか! いいぞ、やっちまえ! オレに与えられる任務ってのはそいつらを止めることか? あえて失敗してそいつらの加勢にまわってやる!
「そこで、貴殿にはこの街で唯一のアクシズ教シスターを誘拐してきてもらいたい」
「え?」
「聞こえなかったかね? 君も自警団で働いていたのだから、アクシズ教シスターのアクアリウスは知っているだろう? あの娘を誘拐してきてほしいのだよ」
「も、もちろん存じておりますが……。な、なぜです? なぜ、アクエリ……アクアリウスを誘拐する必要が? そんなことをすれば、徒党を組んでいる連中が黙っているとは思えません……。なぜ、わざわざ連中を焚きつけるようなことを……?」
「ああ、誤解させてしまったかね? 奴らには今すぐに、こちらに攻めてきてほしいのだよ。奴らの規模だが、今はまだ数十名程度なのだ。その数なら、攻め込まれても容易に撃破できる。放っておくと、奴らの規模が大きくなり、数百名単位になってしまうかもしれん。そうなると我々も対応が難しくなる。それならば今の内に……芽を摘んでおこうというわけだ。アクアリウスを我々が誘拐すれば、連中は君の言うとおり、すぐに反乱を起こすだろう。アクアリウスの解放を求めてな。連中自身の準備が整っていないことを承知で……」
反乱分子が未成熟な今の内におびき出して始末する。そのためだけにアクエリを餌として利用するってのか……!
「……司祭長様。ご無礼を承知でお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「なにかね?」
「私は予ねてから、どうにも理解できないことがございました……。なぜ、アクエリの……アクシズ教の布教を見逃しているのですか? 我がワルモン教会の力を持ってすれば、アクシズ教の撲滅は容易いはず……」
そうだ。何でこいつらはアクシズ教を完全に潰さないんだ? アクシズ教を潰せば、反乱だって起きないだろうに……
「はっはっはっは! 本気で言っているのかね? カズヤ殿。貴殿は相当に純粋だ。まるで子供だな。愚かしいと言っても良い」
イービルがオレの発言に笑う。他の幹部達も笑っている。オレはそんなにおかしなことを言ったのか……?
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