第41話 薄い『真実』

 よし、今日も無事、アクエリはお布施を受け取ってくれたようだ。


「おい! クソ新入り! 今すぐ、スルアム教会の司祭長室に行け! ……デモンズ司祭長様が直々にお呼びだ! クソ! 上手いことやりやがって!」

「お疲れ様です、班長。司祭長室? なんだってそんな場所にオレは呼び出しされるんです?」

「マジに言ってんのか? てめえ。オレ達自警団が司祭長室に呼ばれる用事と言えば、一つだろうが。ワルモン教徒兵に登用されんだよ、てめえは。明日からオレはてめえに敬語を使わなきゃいけねえってわけだ……。クソが! 今の内に散々罵倒しといてやる!」


 ……確かにオレはイービルから、デモンズがオレをワルモン教徒兵に採用するつもりでいるという話を聞いて、自警団に入ったわけだが……、やけに出世が早くないか……? 何を企んでやがる……。っていうか、明日から、オレの方が上司なら、班長はもう罵倒はしない方が良いんじゃないか? ご機嫌を取ると言う意味で……。

 

 教会に到着し……オレは司祭長室の中に入る。校長室くらいの大きさをイメージしていたオレはその広さに面食らう。そう言えば、この教会自体もかなりの大きさだ。いったいどんだけの金を民衆から搾取してんだ……。


「ようこそ。司祭長室へ……。スズキ・カズヤだったかな……?」


 立派な卓に両肘を突き、顔の前で手を組んでいるデモンズがオレに話しかけてくる。……やはり、それなりの風格が漂っている……。周囲には幹部とみられる神父達が左右に別れるように立ち、整列している。デモンズから見て右側の一番近い所にイービルも立っていた。


「はい、この度は司祭長室にお招きいただき、ありがとうございます」


 オレは無駄に丁寧に答える。こいつらと敵対するのは悪手だからな……。


「そんなに畏まる必要はない。もう大方見当は付いているだろうが、今回、君をここに呼んだのは、他でもない、ワルモン教徒兵への君の入隊が決まったからだ。暴漢から身を呈して私を護った功績を認めてのことだ。おめでとう、今後も優秀な働きを期待しているよ?」

「入隊させていただき、光栄です。誠心誠意、務めさせていただきます……」


 嘘だがな!


「さて、それでは君に『真実』を教えねばならん……」

「『真実』……ですか?」

「ワルモン教会直属の機関であるワルモン教徒兵に属する以上、君にはワルモン教会のことを詳しく知ってもらわねばならん……。まず、大前提として……我らがワルモン教会はこのスルアムの民から富を搾取して活動している組織だ」


 こ、こいつ、言い切りやがった。他の幹部連中も涼しい顔をしている。


「教会というのは名ばかりだ。国からの目を欺くためのカモフラージュと言っていい。驚いたかね?」

「ええ」


 ああ、驚いたぜ。悪びれもせず、そんなことを話していることにな! ていうか誰でも想像できるだろ、そんなこと。なんて薄い『真実』だ。

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