第34話 自警団への勧誘
拷問から一週間程経っただろうか……。オレは最低限の暴れ牛討伐だけを行い、最低限のお布施をする、というスタイルに変えていた。正直、オレとアクエリたちが生活するにはそれで十分すぎる金額を稼げるしな……。
「これは、これは。ごきげんよう」
アクエリたちの家に向かう道中、オレはその耳触りの悪すぎる声を聞き、鳥肌が立つ。できれば二度と会いたくないってのに……。その男は邪悪な笑みを浮かべ、そこに立っていた……。
「イービル…………神父……様……」
「元気な様子で良かった……。君には少々、厳しい『指導』を与えましたからねえ……」
何が『指導』だ……! 自警団の連中と話していた時、堂々と『拷問』という単語を発していたクセに……!
「ふーむ。いまだにそのような反抗的な目をされるのですか……。常人ならば、とっくに天に召される『指導』を受けたというのに……。もう一度、受けたいのですか? このイービルの『指導』を……!」
……あんなことをされたんだ……。オレも馬鹿じゃない。こいつらに対抗するためのスキルをいくつか覚えた……が、どこまで通用するかはわからない……。下手に逆らうのは悪手だ……。オレは小さな声で「いえ、生まれつき目付きが悪いもので……」と答えた。
「まあ、少しは信心深くなっているようですね。今の私に対する目付きは不問にしましょう。わざわざ私があなたに会いに来たのは、デモンズ司祭長様からの御言を伝えるためです」
「デモンズ司祭長……?」
「あなたは常識に欠けているようですねぇ……。我がワルモン教の最高指導者であるデモンズ司祭長様の名も知らぬとは……」
最高指導者? そんな偉い奴がオレに何を伝えるってんだ……?
「光栄に思いなさい。デモンズ司祭長様はあなたが多額のお布施をしていることを大変にお喜びになっている。信者の鑑、だとね。よって、ワルモン教徒兵への入隊を許可されようとしていらっしゃいます……」
「ワルモン教徒兵?」
「常識のない者に説明するのは疲れますねぇ……。ワルモン教会お抱えの軍のことです……」
「そんなものにオレが入隊して何になるってんだ?」
「不敬な言葉遣いですねぇ……。良い話だと思いますよ? なんせ、ワルモン教徒兵になれば、お布施は免除されますからねぇ……」
お布施免除という言葉にオレは揺れ動く。いつまでもあいつらを……アクエリたちをあんなとこに住まわせておくわけにもいかない。お布施が免除となれば……、すぐにでもあいつらに家を買ってやれるはずだ……。
「ほう、やはり、お布施免除というのはあなたにとっても魅力的なようですねぇ。……ワルモン教徒兵になるには慣習があるのです。自警団の人間から優秀な者を引き抜くという慣習がね。もし、興味があるのなら、ここに来なさい。自警団の本部です」
イービルはオレに自警団本部の場所が描かれた地図を渡す。
「自警団になれば、いまの九割のお布施が6割になるのです。悪い話ではないでしょう? あなたが自警団に入団されることを、心からお待ちしていますよ」
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