第28話 神父の魔法攻撃

「なんなんだよ! アンタ! ワルモン教ってのはこんなあくどい宗教なのか?」


 オレは邪悪な笑みの神父に詰め寄る。オレはてっきり、ワルモン教ってのは良い宗教だと思っていたからな。街の連中はなんでこんな宗教を信仰してんだろうな?


「神父様、お下がりください。このことが国にばれたら……、ワルモン教の名に悪い影響が……出るのでは?」

「心配する必要はありません……。国など、簡単にだませます……。それよりも、この男から自警団がお布施を徴収できなかった……、なんて噂が流れる方が我々にとって痛手だとは思いませんか? 街の連中にも徴収を拒否する人間が出て来るかもしれません……」

「確かに……」


 神父とヤクザたちが何やら話し込んでいる。今の内だな。さっさと逃げるとするか……。

「おっと、お待ちなさい。まだ話は終わっていませんよ?」


 神父がオレを呼び止める。オレは神父に向かって言ってやった!


「オレはお布施なんて払うつもりはない。ましてや、ヤクザなんかとつるんでる悪徳宗教なんかにな!」

「ヤクザじゃねえ! 自警団だ!」


 ヤクザの一人が叫ぶ。うるせえ! やってることは変わらねえだろうが、と心の中でオレも叫ぶ。


「そうですか。それならば仕方がありませんねえ。クリエイト・ファイア!」


 神父がオレに向かって魔法を撃ってきやがった。ま、ちょっと熱いだけでダメージはない。


「ほう、これはこれは、素晴らしい防御力をお持ちだ」


 オレは『どうも』と挨拶してやった。


「それならば、遠慮はいりませんねぇ……。全力で行きますよ! ……クリエイト・ファイア!」

「あっつ!」


 オレはあまりに熱いから、声を出してしまった。神父はその様子を見て目を見開く……。


「なんと、信じられませんねえ。一瞬で牛が丸焼きになってしまうくらいの火力なのですが……ほとんど効いていないとは……」


 神父は感心するように話す。その表情にうろたえや怯えは見られない。


「し、神父様、に、逃げましょう。今の魔法を喰らって、なんともないなんて人間じゃねえ!」


 ヤクザが慌てた口調で神父に促す。


「落ち着きなさい。冷静さを失うと、隙を突かれますよ? 火がダメなら、水はどうです? クリエイト・ウォーター!」


 もちろん、オレには効かない。神父は魔法を撃ち続けてきた。


「クリエイト・アイス!」

「クリエイト・サンド!」

「クリエイト・ウインド!」


 どれも、オレには何の効果も、ダメージもない。


「ふーむ、困りましたねえ。私の攻撃魔法が全く効かない……。大したものです……」


 相も変わらず、神父は落ち着いた様子だ。何か、分析をしながら魔法を使っているようにも見えるが……。オレはもう付き合いきれないと思い、再びその場を去ろうとする。


「では、これならどうです? カース・ドレイン!」

「うっ!?」


なんだ!? 心臓を締めつけるような痛みが走り、思わずうずくまる。だが、すぐに治まった。


「ほう、生命力を奪う呪いをかけたというのに、数秒もせずに回復してしまう……。厄介ですねえ……。しかし、あなたの弱点が見えてきましたよ……。単純な魔法攻撃、物理攻撃はほぼ効果がないようですが……、特殊魔法は少なからず効果があるようだ……。ならば、案外、こういう魔法には弱いかもしれないですねえ」


 神父が再びオレに魔法をかけようとする。オレはもう辛抱たまらなかった。


「鬱陶しいぞ! いい加減にしろ! オレはもう帰らせてもらう!」

「そうはいきません。メンツの問題があるのでねえ……。スリープ!」


 あれ? 急に眠く……、視界が暗くなっていく……。オレはその場にうつ伏せにたおれてしまう……。


「抵抗はしているようですが、じき、眠りに入るでしょう。この男を教会に連れてきなさい」


 神父がヤクザ達に指示を出している……。


「しかし、こんなに痛めつけてもダメージを受けない奴をどう拷問するおつもりで?」

「肉体的損傷を与えることだけが拷問ではありませんよ? この方には精神的拷問を行います」


 神父とヤクザ達の物騒な話が耳にはいってくる。ふざけるな、と声を出そうとしたが、オレは眠気に耐えられず、意識を失ってしまった。

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