第27話 スルアム自警団
オレはいつものとおり、アクエリたちへの差し入れを購入して、家に向かおうとしていた。
「おい、そこの兄ちゃん。お前だよ、お前」
やけに柄の悪い奴らに捕まった。ヤクザ風の男たちだ。オレが生前に嫌がらせを受けていた借金取りたちを連想させる……。
「なんです? オレ、急いでいるんですが……」
「兄ちゃん、アンタ、ワルモン教の神父様たちからお願いされたお布施を断ったらしいじゃねえか……?」
「ええ、お断りしましたよ? でも、それがアンタ達となんか関係あるんですか?」
「ああ、大有りだなあ。てめえも知ってんだろ? この街が誰のおかげで魔王軍から助かったのか」
アクエリが話してたアレか。たしか、魔王軍が攻めてきた時に、ワルモン教が魔王軍から人々を守り、復興の手伝いをしてっていうやつだな。
「ええ、詳しくは知りませんが聞いたことはありますよ。ワルモン教が助けてくれたんですよね? で、それで?」
「『それで?』だと? 最近はよう。てめえみたいな不義理なやつが増えてオレ達、スルアム自警団も困ってんだよなあ。信心が足りねえ奴が増えてよう!」
「なんです? スルアム自警団?」
「てめえ、知らねえのか? オレ達、スルアム自警団を」
「ええ、何分、最近この街に来たものでして……」
「名前のとおりだよ。このスルアムの街を守るために結成された自警団。この街の用心棒ってわけだな。そして、魔王軍、正確には魔王軍の残党だが……そいつらからこの街を守ってくれているワルモン教の司祭様や教徒様に、お布施をしてねえ人でなしどもから、ワルモン教会に代わってお布施を徴収している組織だ」
お布施は徴収するもんじゃねえだろ……。なんだこいつら頭狂ってんのか?
「ちなみに言っておくが、これは教会に強制されてやってるもんじゃねえ。オレ達自警団が自発的にやってることだ。勘違いするんじゃねえぞ?」
その言い回しはなんだ? さっきからよくわかんねえこと言いやがって。とりあえず、分かったことはこいつらの目的だけだ。
「要は、アンタ達はオレにお布施をしろって言ってんのか?」
「話が分かるじゃねえか……。てめえは収入が高額らしいな。9割、徴収させてもらうぜ?」
「いやだ、と言ったら?」
「力づくで奪ってやるだけだ!」
言い終わるや否や、ヤクザ風の男たちが襲いかかってくる。オレは刀を抜く。切るつもりはないが、脅しにはなるはず、と思った。だが、男たちは怯むことなく、攻撃してくる……。元々、格闘スキルがないオレは男たちにたこ殴りにされる。しかし……。
「なんだ、こいつ!? まるでダメージが与えられねえ!」
そりゃ、そうだろ。なんてったって、女神アクア曰く、魔王並み、クリス曰く、神レベルの防御力だからな。普通の奴らじゃオレにダメージは与えられない。それに対してオレの攻撃は平均男性より大きく下回るとはいえ、この男達にダメージを与えられない程じゃない。オレは刀の刃がない方で男たちに攻撃を加える。少しずつだが、確実にオレの方が優勢になっていった。
「ちくしょう。なんてタフな野郎だ……」
ヤクザの一人が弱音を吐く。なんとか、この場を切り抜けられそうだ。そう思った時だ。
「ふむ。これは思ったより厄介ですねえ」
今度は聞き覚えのある声だった。ギルドでオレに邪悪な笑みを浮かべていた神父だ……。
「神父様、いけませんよ。お姿を晒しちゃあ……」
ヤクザ達は神父の男の行動を諌める。ていうか、何が、『教会に強制されてやってるもんじゃねえ。オレ達自警団が自発的にやってることだ』、だ! モロに関係持ってんじゃねえか!
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