第26話 お布施のお願い
2日後、オレはその日も十体以上の暴れ牛を討伐した。
「へへへへへ、よし、よし、よし」
オレは笑顔が止まらなかった。レベルアップしてからのこの3日、全ての狩りで暴れ牛を十体以上、狩っていたからだ。貯金は三千万エリスに届こうとしていた。この貧民街スルアムにおいて、これだけの額を持っていれば、大金持ちも大金持ちだ。オレはそろそろホーム○スのような生活をしているアクエリたちに宿を取らせ、最終的には家でも買ってやるか、なんてことを考えていた。そんな時だった。あいつらが来たのは……。
「もしもし、そこの冒険者のお方よろしいですかな?」
聞き覚えの無い声がする。ギルドで換金をしていたオレは振り向く。そこには立派な祭服を来た神父らしき中年くらいの男たちが3人いた。
「もしかして、オレのことですか?」
「ええ。そうです」
「何の用です? てかあなた方はいったいどういった人なんですか? 見たところ、聖職者のようですが……」
「これは失礼。我々はワルモン教の神父をやっているものです。声をおかけしたのは他でもない……。お布施のお願いをして回っているのです……」
お布施……か。この街はワルモン教が台頭しているんだったな。まあ、今のオレはお金持ちだし? 少しのお布施くらいわけはない。オレは3万エリスを神父に手渡そうと差し出した。
「これは?」
神父の一人が話しかける。見ればわかるだろ、とオレは思いながら答える。
「お布施ですよ。3万エリスあります」
「本気でおっしゃっているんですか? たった3万エリスぽっ……、いや失礼」
いま、3万エリスぽっちって言おうとしたかこの神父。生臭坊主も大概にしろよ。一生懸命働いて稼いだお金からお布施してやろうというのに、なんで文句を言われなあかんのだ……。
「そんなことを言われたらお布施の気持ちもなくなりますよ」
「いや、ホントに失礼しました。この街の住人は皆、もっとお布施してくれていますので、つい……」
「もっと、って……、皆さん、どれくらい払ってるんです?」
「そうですなあ。稼ぎにも依りますが……、皆、収入の5割はお布施してくれておりますなあ……」
「5割!?」
「ええ、そしてあなたのような高額収入を持っている方は、9割お布施してくれていますなあ」
9割だと!? 日本の累進課税も真っ青な割合じゃねえか!
「誰がそんなに払うか! とっとと消えてくれ!」
オレがそう叫ぶと、ギルドにいる人間たちがざわつく。『あいつ、殺されるぞ……』みたいな物騒な言葉が耳に入る……。何だってんだ?
「本当に……お布施をしなくてよろしいのですか?」
「くどいな。お布施なんてしねえよ」
「そうですか……」
神父3人は踵を返して歩き出した。
「あなたに不幸が舞い降りないことをお祈りしますよ……」
神父の一人が口を開く。その笑顔が邪悪に見えたのは気のせいじゃなかったんだと、後に気づくことになる……。
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