第19話 『愛』を込めて作りました!

 正午くらいになっただろうか……。オレは2体の暴れ牛の死体をギルドに持っていき、換金した……。1体百万での買取りが相場の暴れ牛だが、状態が悪いなどと言われ、換金額は百八十万エリスだった……。クソっ! 二百万エリス稼げたと思ったのに! ギルドのケチンボ! ちょっと状態が悪いくらい大目にみてくれてもいいじゃないか!

 オレは換金を終えると、先日借りた百万を返しに同じくギルドの銀行エリアに移動した。


「はい、きっちり、百一万エリスです。確かに受け取りました。まさか、返せるとは思いませんでしたが……」


 一言余計なことを受付嬢に言われるが、怒るのも面倒なので何も言わなかった。てか、昨日金を借りる時も思ったが、百万エリスの利子が一日で一万エリス膨らむって暴利すぎるだろ! 

 でも、まあ、これでオレの手元には約百万エリスの金が残ったわけだ。これはかなりでかい。この世界の物価がどれほどのものかはまだ把握しきれていないが、昨日泊った結構上等な宿で一泊一万エリス程度だったし、おおよそ1エリスは1円相当の価値があるようだ。


「そうだ、服と……防具を買った方がいいだろうな」


 オレの服は、今朝の暴れ牛との一戦で、ボロボロになっていた。毎回服を買うのも馬鹿ばかしいので、防具を買うことに決めた。もちろん、向かう先は魔道具店ウィズ、スルアム店だ! ……美人のウィズさんに会いに行くわけではないよ?


「こんにちは」


 オレは挨拶をしながら店の中に入る。


「まあ、今日も来て下さったんですか!?」


 ああ、ウィズさんの笑顔がまぶしい……。愛想の悪いギルドの受付嬢たちとは大違いだ……。癒されるう!


「ええ、ちょっと服がボロボロになってしまいまして……。この機会に防具を新調しようと思いまして……」

「それでは……これなんてどうです? 魔王を倒した勇者が実際に、装備していたマント付きの革防具です!」


 あれ? この流れ……、前にもあった気がするぞ?


「へえ! すごいですね。ちなみにおいくらなんです?」

「2億エリスです!」

「2……なんですか?」

「2億エリスです!」


 だ・か・ら! 買えるか! そんなもん! この貧民街で売れないだろ……こんなの……。いや、この貧民街でも金持ってるやつは持ってるのか……?


「あの……、予算は五十万エリス程度なんですが……」

「それなら、これなんてどうですか? 剣の時と同様、さっきの本物の勇者が装備していた防具、そのレプリカになりますが、五十五万エリスになります」


 オレはちょっと試着させてもらった。剣を試しに持った時もそうだったけど、メッチャ軽い。筋力レベルの低いオレでも軽いと思える……。勇者ってのはこんな軽い装備で大丈夫だったのか? ま、動きやすさを重視したのかもしれないな。なんたって勇者だしな。オレの考えの及ばないことをやっていたに違いない。でも、防具としてちょっと頼りないなあと思ってしまう。なんせ軽すぎるからな。ホントに防具の役割を果たせるのか、疑問が残る。


「ちなみに……」


 ウィズさんが口を開く……。


「私が『愛』を込めて作りました!」

「買います」


 だってウィズさんが愛を込めて作ったんだよ? それなら買わないと男じゃないだろ! ……笑顔とナイスバディに釣られたわけではないよ?

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