第12話 レプリカちゅんちゅん丸
オレが声のする方に行くとそこには……、水色の髪をした少女が芸をする姿があった。
水色の髪はアクアと一緒だが、眼は黒色だし、服装はつぎはぎだらけ。あと、申し訳ないが容姿はアクアの方が2段階位上だ。まあ、それでも十分に美人ではあるのだが……。
「ひっこめ、ブス! ワルモン教のお膝元でアクシズ教を布教してんじゃねえ! 今すぐこの地から去れ! 異教徒め!」
ヤジが容赦ねえ! てか、この世界のブス基準のレベル高すぎるだろ。あの子でブスだったら、オレの元いた世界にはブスしかいねえよ。
彼女は石を投げつけられていた。どうやら、この街ではワルモン教というのが主流でアクシズ教とかいうのは迫害されているようだ。
それでも、彼女の前に置かれた缶には少しずつだが着実にお金が入っていった。お金を入れていった人は皆、「どうか、アクア様、ご慈悲を」と言っていた。彼女の花鳥風月とかいう水を扇子から出すだけの芸は終わりを迎えた。石を投げつけられていた彼女の顔は痣だらけだった。美人なのに可哀想に……。
「おっと、人の心配をしている場合じゃないな。剣を買いに行かないと……」
オレはその場を去り、武具屋を探した。すると、街の通りから少し離れたところに『魔道具店 ウィズ スルアム店』なる店があった。
「魔道具店……。剣、売ってるんだろうか……?」
オレは疑問に思いながらも店の中に入る。すると、それはそれは豊満な胸を持つ店員が出迎えてくれた。
「魔道具店ウィズにようこそ! 支店長のウィズです!」
「ひゃい! どうも!」
しまった。緊張して噛んでしまった。だが仕方ないだろ。こんな美人でナイスバディな店員に顔を近づけられたら、どきどきもするだろ。
「何をお探しですか?」
やたら嬉しそうに接客をしてくれるな、この人。この街の人間は皆、愛想が悪いので新鮮だ。
「ちょっと剣を探しているんですが……」
「それならこれはどうです? 魔王を倒した勇者が実際に使っていた剣、ちゅんちゅん丸です!」
なんで勇者の剣がここにあるんだ? なんで日本刀チックなんだ? そしてなんだ、ちゅんちゅん丸とかいうネーミングは? とは思ったが実際に手に取ってみる。凄く軽い!
「ところでこれ、おいくらなんです?」
「1億エリスです」
「え? 1……なんですか?」
「1億エリスです!」
買えるか、そんなもん! この貧民の街で売れるのかこんなもん!?
「あ、あの、予算は五十万エリス程度なんですが……」
「それだったらこんなのはいかがですか? 魔王を倒した勇者の剣のレプリカです。六十万エリスですが、性能は保証しますよ!」
これまた、日本刀チックな物が出てきた。
「耐久性はいかほどですか? すぐに壊れると困るんですが……」
「私の魔法で強化してあるので大丈夫だと思いますよ。これでも昔は冒険者でしたから!」
そんな魔法があるのか、店主も良い人そうだし、これを買うか……。決してナイスバディに釣られたわけではないよ? 他にも色々薬品みたいなのも置いてあった。
「それは暴れ牛を引きつける匂いのする香水ですね」
オレが気になって見ていた薬品について店員が説明してくれた。
「そんなものがあるんですね。いくらですか?」
「十万エリスですね」
「じゃあ、これも頂きます」
ラッキー、ラッキー。これで暴れ牛を探す手間が省けるぞ!
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