第11話 どうなっても知りませんよ?
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オレ、鈴木和哉は日雇い労働をしてネットカフェで寝泊まりをするという人生を送るようになった。定職に就けば職場に、アパートを借りれば自宅に借金取りのヤクザが押し寄せて来るからだ。住所不定無職……、それが借金取りに追われることなく、安心して生きることができる唯一の方法だった。だが、徐々に心身は荒れていく。世の中全てを恨むようになっていった。なぜオレだけがこんな目に……、そんなことを思う日々が続く。
そんな時、ネットカフェのパソコンであるニュース記事を目にした。
『○○○無差別殺傷通り魔事件から○○年』
数ある通り魔事件でも最悪と言われた事件の特集だった。精神の病んでいたオレは「これだ」と思ってしまった。オレをこんな目に合わせた世界はそれ相応の報いを受けなくてはならない。このくだらない世界に復讐を……!
オレは歪んだ感情を止めることができなくなっていた
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「暴れ牛討伐には剣と、後、運ぶための馬車が必要だな」
いつものとおり、オレは独り言をつぶやきながら、必要な道具を考える。剣は安いものでも五十万エリス、馬車を借りるのは騎手代を含めて十万エリスは必要だそうだ。
オレは意を決してギルドに金を借りることにした。クソ親父と同じことをするのは癪だが、背に腹は代えられない。オレが死ぬためにはスキルポイントと金とレベルアップが必要なのだ。それを手に入れるには依頼……クエストを成功させるしかない。
「お金を貸してもらえませんか?」
オレはギルドの受付嬢に話しかけた。相変わらず、「あ?」みたいな表情でオレを見て来る。
「あなたの場合、百万エリスまではお貸しできますが、期日までに返せなかったら最後、どうなっても知りませんよ?」
怖えよ。返せなかったらなにされるんだよ。まあ、オレには最高の防御力と生命力があるから死ぬことは無い。大丈夫だ。……死ぬより怖い事されたらどうしよう……。
「ええ、もちろん、きちんと返しますとも」
オレがこう答えると、受付嬢は借用書とペンを放り投げるように机の上に出した。無言だったが、書けということだろう。オレが必要事項を記入すると裏の部屋から布袋を持って来た。オレは中身を確認し、ギルドを後にした。
さて、どこの武具屋で剣を購入するべきか……、街をうろついていると、騒がしい声が聞こえた。
「さあさあ、アクシズ教の女神、アクア様も使っていた花鳥風月だよー。見なきゃ損だよー」
アクアだと!? オレをこんなところに送り、クソみたいな能力を授けてくれやがったアクアか!?
オレが声のする方に行くとそこには……、水色の髪をした少女が芸をする姿があった。
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