第8話 ようこそ貧民の街 スルアムへ
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オレ、鈴木和哉は普通の両親の元に生まれたのだが……。
親父はオレが小学1年生の時に株に失敗し、多大な借金を抱えて蒸発した。
母親は離婚し、オレとともに実家に身を寄せた。実家は既に母親の兄が夫婦で家を継いでおり、祖父と祖母は他界していた。
正直、居心地はかなり悪かった。伯父さんと義理の伯母さんがオレたち親子のことで揉めているのを見ると胸が張り裂けそうだった。不幸は続くもので、心労が祟ったのか、母が突然この世を去った。オレが小学4年生の時のことだった。
母が死んでから、義理の伯母さんの意地悪が始まった。母が稼いでいた金が家に入らなくなり、オレという金食い虫だけが残ってしまったのだ。イライラしてオレに意地悪してしまうのも無理はないことだった。直接、体を殴られるなんてことはなかったが、嫌みを言われることが辛く、幼いオレにとっては苦痛だった。
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「ちなみに知力は平均より少し低いくらいだね……」
クリスがオレに能力値の説明を続けていた。知力平均より低いっておかしくない? 女神のやつ、「知力は私と同じにしといてあげたわ」と言ってたじゃねえか。これじゃ詐欺だろ。
……クリスが言うには冒険者ってのは色々な職業に就けるそうだ。剣士、魔法使い、僧侶、盗賊などなど。だが、クリスはオレに最弱職である冒険者を勧めてきた。というのも冒険者以外にジョブチェンジするとオレがせっかく今習得可能になっているスキルが全てリセットされてしまい、習得できなくなるからだそうだ。
クリスが何でそんなことを知っているのかはしらないが、わざわざスキルを習得できない状態にする必要はないだろう。もしかしたら自殺に最適なスキルもあるかもしれないからな。オレはクリスの提案に乗っかり冒険者になることを選んだ。
「さて、君が死ねないことが分かって安心したし、あたしはこれでお暇するよ!」
クリスはオレに笑顔を向ける。
「ようこそ、貧民の街『スルアム』へ!」
「ええ……」
ギルドでクリスがこの街は特殊と言っていたがそういうことかよ。住人達の目付きが悪いのと子供がボロボロの服を着ているのもそのためか……。えらい所に飛ばされてしまったもんだ。
「願わくば君がこの世界で幸せになることを祈っているよ! また会える機会があったらその時はよろしくね!」
そういうと、クリスは結構なスピードで走り去って行ってしまった。
「これからどうしよう……」
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