第7話 能力確認
ギルドには目付きの悪い受付嬢が3~4人くらいいた。どれも美人なのだが、その美人が台無しになってしまいそうなくらい、全員不機嫌そうだった。
「なあ、なんで受付嬢がこんなに無愛想なんだ? 普通笑顔で接してくれるもんだと思うんだけど……」
「はは……、この街はちょっと特殊だからね……。疲れてるんだと思うよ」
クリスがそう答える。この街は特殊……か。そう言えばどことなーく、住人の目付きが悪かったし、子供の来ている服がボロボロだったような感じがする……。
冒険者の適正が書かれるカードの発行には手数料がかかるということだった。当然オレはこの世界の金など持ち合わせていない。クリスが「立て替えるから、いつか返して」といって金を貸してくれた。すまんな。その約束が果たせることはないだろう。オレはこの世から消えているだろうからな。
「はい、こちらです」
受付嬢は不機嫌そうに言ってオレにカードを手渡すとすぐに去って行った。説明、何もなしかよ……。
「はは……、ま、まあとにかく確認してみようか……」
受付嬢の対応にクリスが少し顔を引きつかせながらオレに促す。カードを見たが何を意味しているのかさっぱりわからない。クリスが横から覗いて口を出す。
「ア、アクア先輩めぇ、また、こんなことを……帰ったらきつくお灸を据えなきゃ……」
「アクア先輩?」
「い、いや……、なんでもないよ……」
クリスはオレのカードをマジマジと見つめる。
「そ、そうだね……、まず、防御力と生命力がすごく高い、ていうか高すぎるよ! 神クラスだよ!」
アクアが言ってたな。魔王クラスに体力と防御力おまけに治癒力を上げておくって。
「どのくらいすごいんだ?」
オレはクリスに尋ねた。死ぬためにはその防御力を越える攻撃力と体力を越えるダメージを与えないといけないからな。確認しておかないと。
「そうだね、まず、防御力だけど、これは、もうこの世に存在しない魔王の攻撃でも十回は耐えられるよ。普通の冒険者はもちろん、攻撃力に特化した
飛び降りても全く痛くないから凄く高いんだろうと予想はしていたが……まさかそこまでとは……。
「次に生命力だけど、これも凄すぎるね。空気中の成分だけで生きていけるね」
「え、今なんて?」
「空気中の成分だけで生きていけるね。君が餓死しようとして、ごはんと水を一切、口にしなくても凄くお腹が減ったり、凄く喉が渇くだけで死ぬことはないね」
あのクソ女神なんてことをしてくれたんだ。これじゃあ……。
「これじゃあ、君は死ぬことができないね」
クリスがオレの思いを代弁した。
「ちなみに治癒力も凄く高い。これは……」
「もういいです。毒にかかっても、やけどをしても、呪いを受けても死なないとかそんな感じですよね……?」
「う、うん。そうだね……」
オレが落ち込んでいるのを見てクリスは閉口する。
「他の能力は……どうなってるんです?」
クリスはオレから視線を逸らす。ど、どういうことだ。
「他の能力はどうなってるんです!?」
オレが食い気味にクリスに問いかけると、クリスはあまり言いたくなさそうに口を開いた。
「筋力、魔力、敏捷性、器用度は最低レベル……筋力は一般女性よりちょっと強いくらい。魔力はほぼなし。敏捷性も一般女性より少しあるくらい。器用度は6歳児くらいかしら……」
一般女性より……って、オレ一応成人になる間際の男なんですが……。幼稚園児並みの器用さってどういうこと? 魔力って何?
「ああ、で、でも大丈夫だよ。まだすごいことが残ってるんだ」
クリスがフォローするように付け加える。なんか悲しくなるんだが……。
「君は全てのスキルを習得可能なんだ!」
「スキル?」
「うん、特殊能力のことだよ! 魔法だったり、身体能力の強化だったりいろいろなものがあるんだ。本来ならジョブチェンジしたり、経験を積んだり、修行をすることによって習得が可能になるんだけど……、君はその全てを既に習得可能なんだ!」
「へえ……」
オレは冷めた返事をした……。なーんか嫌な予感がしたのだ。
「それで習得可能ということはまだ習得できてないんですよね? どうやったら習得できるんですか?」
「スキルポイントっていうのを消費して習得するんだけど……」
クリスが言い淀む……。
「オレはそのスキルポイントっていうのをいくつ持ってるんです?」
「ゼロポイントだね……」
「死にます」
オレはそう宣言した。
「いや、君、死ねないんだよ……」
即座にクリスに突っ込まれた。
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