第一部 スルアムの街
第5話 別の世界に到着
警視庁各位へ
20○○年、□月△日、都内某所にて無差別通り魔事件が発生するだろう。
なんの罪もない市民を見殺しにしたくなければ、私を捕まえてみろ。
これは私の復讐だ。
私をこんな目に合わせた世界への復讐だ。
このくだらない世界に復讐を……。
私の名は鈴木和哉。心配しなくていい。本名だ。
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「痛たた……」
オレは気が付くと、光から解放され、地面に仰向けになって空を見上げていた。
起き上がって周囲を確認すると、どうやら街の通りのようだ。通行人達が道に寝そべっているオレを見ている。異物を見ているような視線が痛い。
「どこだ? ここ」
道にはアスファルトは敷かれておらず、何の舗装もされていない。そんな土の道路を古めかしい馬車が通り過ぎる。
建物もレンガ造りだ。見慣れた木造やコンクリート造の建築は見当たらない。
電柱も見当たらない。そのせいか、古そうな建物ばかりなのに景観は美しかった。
「ホントに別の世界に来ちまったのか……」
なんとも不便そうな世界だ。空気や景観は綺麗かもしれないが、電気やガスはなさそうだ。日本の方が何百倍も住みやすいだろう。
「おっと、そんなことはどうでもいい」
オレは周囲の建物を見る。
「お、あれくらいあれば十分かな?」
……独り言が多いのはいつものことだ。オレは人間関係が希薄すぎて独り言を呟く癖ができてしまっていた。自分でも哀しい癖だとは思っていたが、結局死んでも治らなかったな……。
建物に近づくとギルドと書かれていた。ギルドという施設が何なのかは分からなかったがそんなことはどうでもいい。ギルドは周りの建物と比べると大きく、一番高い所は十二~十三メートルくらいはありそうだった。
「十分死ねるな」
オレは最上階まで駆け上がると地面に向かって飛び降りた!
「さらば、別の世界。短い間だったが世話になったな」
このくだらない世界からおさらばを!
オレの体は鈍い音を残して地面に激突した……。
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