第2話 天国に行きますよ?

「あなた……。ゲームは好きでしょ?」


 イラッとした。女神さえもオレを見た目で判断するのか、と。正直失望した。興味があるか、ないかと言えばゲームに興味はあったさ。だが、オレは家庭環境のおかげでゲームに触れることはなかったのだ。


「ゲームなんてしたことねえよ!」


 オレはぶっきらぼうに答える。


「なんだ? 女神さまもその辺の人間と同じで人を見た目で判断すんのか?」

「なによ! そんなに怒ることないじゃない! 大体アンタの元々の見た目なんて知らないっての!」


 怒らせるようなことを先に言ったのはお前だ! と言いたいところだったが、女神の言葉が気にかかる。


「オレの元々の見た目を知らないってどういうことだ?」


 オレは女神に問いかける。女神は頬を膨らませたまま話し出す。


「アンタの元の顔なんてわっかるわけないじゃない! 大体どんなアクロバットな自殺してんのよアンタ! ナイフで割腹した上で高層ビルから飛び降りるなんて!おかげでアンタの魂、それはそれは醜い状態だったわよ。基本的に魂は死んだ状態で現れるから。顔はもちろんぐちゃぐちゃ」

「すいません……」


 この女神のいうとおり、オレは、それはそれはアクロバットな死を選んだのだ。精神状態がおかしかったとはいえ、死体処理をした人には多大なご迷惑をおかけしただろう。


「え? じゃあオレの今の顔や体はどうなってんの?」

「私が適当につくって上げたわ。心配いらないわ。平均よりちょっと男前に造り直してあげたから」


 女神は顔を少し赤らめながらそう説明した。俺としては元々の顔が醜く、それが原因でいじめられたこともあったので、平均以上だという今の顔に文句はなかった。顔まだ確認してないけど。


「それじゃ、話を続けるわよ。異世界に持って行けるものを選んでもらうわ」

「オレは天国に行きますよ?」

「この中から好きなアイテムを選んで……って。え? 今アンタ何て?」

「だから、オレは天国に行きますよ?」

「はああああああ?」


 女神、アクアは何言ってるんだこいつ、正気か? といった表情でオレを見る。


「私の話聞いてた? 天国には何もないのよ!? お爺ちゃんみたいな生活しか待ってないのよ?」

「構いませんよ?」

「ふ、ふざけないで! な、なんなの? もっと良い人生を歩みたかったとかそんな願望があるでしょ……。他の奴はそうだったわよ!」

「知りませんよ、他の人のことなんて……オレは生きることに疲れたの。もう一回また同じようなしんどさを味わいたくないし」

「な、なんて無気力なの」

「正確には無気力になりたいんだよ、オレは」


 死ぬ直前のあんな思考回路になるくらいなら……怒りや憎しみや悲しみで頭がいっぱいになるくらいなら、オレはボーっとしたい。だが、自分を失うのは怖い。それなら天国に行った方がいい。

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