このくだらない世界に復讐を……
向風歩夢
プロローグ
第1話 死後の世界
「鈴木和哉さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも……いいえ、お望み通り亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」
真白な部屋の中、オレはそんなことを言われた。まさか、死後の世界があるとは思ってもみなかった。
オレに死を告げてきた相手は椅子に座っていた。
えらい美人さんだ。年はオレの二、三歳年下だろうか。オレが見てきた女性の中で最も美しいと断言できた。明るい水色の髪に透き通った白い肌。女神とはおそらく彼女のことをいうのだろうな。
「私は水を司る女神、アクア。あなたのような現世で救われなかった者を導く者……」
ホントに女神だそうだ。どうりで美しいはずだ。普通の男子であれば思わず口説いているだろう美貌の持ち主だな。もっとも、オレにそんなことをする意欲は湧かないが。
「それにしても、自ら死をお望みになるとは……。そんなに嫌なことがあったのですか?」
「ええ、まあ」
「ま、そんなことはどうでもいいのでお話を進めましょうか」
え? そこはオレの独白を聞いて同情したり、慰めたりしてくれるところじゃないの?
「あなたには選択肢がふたつあります。ひとつは生まれ変わり、新たな人生を歩むか。そしてもう一つは天国的なところでお爺ちゃんみたいな暮らしをするか」
生まれ変わり? 天国? お爺ちゃん?
オレが状況を掴めない中、女神アクアは続ける。
「天国ってのはね、あなたたち人間が想像しているような素敵な所ではないの。がっかりさせて悪いけど、天国にはね、何にもないのよ。テレビもなければ漫画やゲームもない。そこにいるのは、既に死んだ先人達。体もなにもないから、エッチなことも、食べることもできず、日向ぼっこするくらいしかないのよ」
最高じゃねえか! オレは世界に絶望して死を選んだんだ。今さら生まれ変わるつもりなど無い。
「じゃあ、僕は天国に行きま……」
「うんうん、天国なんて退屈な所行きたくないわよね? かといって今更記憶を失って赤ちゃんからやり直すのも、あなたという存在が消えちゃうようなものよ。そこで良い話があるのよ」
なんだ、人の話などまるで聞いていないぞ、この女神。
女神は笑いながら言った。
「あなた……。ゲームは好きでしょ?」
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