第0.1話「友達」


あれから1時間ぐらいたっただろうか。

雨の中座っている女の子は俺が傘を貸してやると言っても1歩も動こうとはしなかった。


「あのさー、もう帰らないとさすがにやばいんじゃねーの?」

「………」

「まーた無視かよ」


さっきから女の子は一言も話そうとしない。この子の親は心配してないのだろうか。いや、心配しているはず…の親なら…


「………て」


考え事をしていると声が聞こえた。微かだけど確かに。女の子が口を開いたのだ。


「!!?な、何?!」


俺はつい興奮して大声を出してしまった。すると、女の子はビクッとして、また黙ってしまった。


「ちょ、ちょ、何話そうとしたんだよ~!!」


「…………どっかいって」


女の子から発せられた言葉はとても棘があり、誰も近づけさせないような一言だった。雨が強くなる。そろそろ本当に風邪を引いてしまう。


「雨強くなってきたし、そろそろマジで風邪引くぞ??風邪引いたら周りのヤツら心配するんじゃねーの?」

「…………そんな人いない」

「…………え?」


女の子が普通に口を開いたことにも驚いたが、発せられた言葉にも驚いた。"そんな人いない"その言葉がどれだけ悲しい言葉か。俺は知っている。


「…どういう事?…何かあったのか?」


聞いてはいけないであろう事を聞いてしまった。に似ている。


「…なんであなたに言わなきゃいけないの」

「……俺の知り合いにも君と同じような境遇の子がいたんだ。その子も最初は話そうとはしなかったんだ。だけど打ち解けていくにつれて話してくれるようになった。」

「………何が言いたいの」



「………俺と…友達になろう!」



「……………は???」



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