第5話 影黄
すっかり朝となり、男は覚醒した。
寝起きの半目で辺りを見回す。
そしてゆっくりと立ち上がった。
クロ、グリーンには感じられなかった、どことなく気品漂う立ち方だ。
服の乱れを細かいところまで直し、人格が変わった時に必ず確認しなければならないノートを見直す。
「..........................ほぅ」
彼、ことイエローは絶望していた。体の主が自動車事故で倒れ、ここで終わるものかと思っていた。
しかし目が覚めたら見知らぬ小屋、ノートには異世界転移したという言葉のみ。
これは、ついている、と言うものではないのか
ん?異世界に来たことに対しての受け入れが早い?仕方がないでしょう、待ち望んでいた事態なのですから。
元の世界では、トラブルを回避するために主人からさまざまな誓約を受けていた。この場所なら、いや自分の元の場所とはなんの関わりもない場所であるからこそ、彼は自由にやれるというものだ。
次こそ主人に
そう硬く決意し、イエローは街へ向かうのであった...
子供達が教えてくれた(らしい)道なりに進んで行く、微妙に舗装されてるようなされてないような、土の道だ。
昔はこういう道がたくさんあったがなぁ...などと、イエローは知らないはずなのに変なことを思い出しつつ先に進む。
ノートを探すためにバッグを漁っていた時、不思議なバッチをイエローは見つけた、どー考えてもイエローの知る人格の中で自分以外誰も好かなそうなバッチである。
それは大鷲に剣が加えられている紋章が彫られており、見ているだけで高そうなものとわかる。
いい趣味じゃないか。
イエローは綺麗に整えた服にそれをつけ、道なりに進んで行くのだった。
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道なりに進んで行ったところに城門があった、ここが街で間違い無いだろう。正直食料というべきものはほとんど無かった。お菓子ばかり食べては健康上良くないでしょ!この体と歳的にニキビとかで出すんですからね!
まずは「情報」「食料」「この世界の通貨」を手に入れなければならない。
しかしそこで城門が立ち塞がる。様子を見る限りこの城門に入るには通行証が必要らしい、
無論いきなりこの世界にきたイエローには、そのようなものはない。途方にくれていると、1人の男が声をかけてきた。
「おおっ!グリーン殿ではないですか!来てくださったのですな!お嬢様もお待ちしております。どうか館に来てください。」
実はこの男、グリーンに助けてもらった騎士のカミーユなのだが、無論イエローはそんなこと知らない。
通行証もフリーパスで都市に入れてもらい(大丈夫なのか...?!)
館まで連れて来てもらってしまった。
しかし、運悪く姫は出かけており、戻るのは夜になるらしい。
「申し訳ない、グリーン殿、お嬢様も楽しみにしておらしたんだがなぁ...」
と謝罪して来た。彼に非は全くないのだが、それでも頭を下げられるところに彼の人徳を感じる。
結局お嬢様と会うのは明日となり、イエローはカミーユに紹介された宿に泊まることとなった。金類も全てカミーユが出してくれた。至れり尽くせりである。
宿で1人、次の人格に向けてのメッセージを書きながらもイエローは考えた。
メッセージを書かないやつは...ピンクとグリーンか、しかしピンクは一応なんか書くしなぁ...
じゃあグリーンだな、何も書かないまま交代するとは、まぁいいあいつらしいか。
しかし、領主の娘に会えるという圧倒的フラグの予感に、イエローは明日も自分の番にならないかなと思いつつ眠りにつくのであった。
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