そして彼女の表情は険しくなっていく。

「甘酸っぱいですね」

「うるさいですよ。……別にあの会話で、なにが変わったとかはなかったんですから」

 からかいの言葉に、彼女は眉を寄せて眉間にしわを作る。

 少しだけ切ない空気を感じて、俺は、あ、と口を塞いだ。


 そうだ、ここにいないということは、彼は枯れたか、咲くか、してしまったのだ。


 うかつだったかもしれない。

 これで機嫌を損ねて、今すぐ出ていけ、なんて言われたらどうしようか。


 悶々と考えていたら、彼女は再び口を開いた。

「それから少しだけ日が経って。急に、花人がよく消えるようになったんです」

「え、でも、枯れるのも咲くのも、暴走した花人が誰かを襲うのも、日常茶飯事だって言ってませんでしたっけ?」

 それなら、別に珍しいことでもなんでもないんじゃないか、と。

 だけど彼女は、首を横に振る。

「確かに花人がいなくなるのは日常茶飯事ですけれど。同じ日に複数人が何の前触れもなく姿を消すんです。それが、毎日毎日続きました。……流石に、それは異常でした」

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