貴種流離譚クソ食らえ!

物語の類型には「貴種流離譚」という一大ジャンルがある。カクヨムで発表されているファンタジー小説のかなりがこれに属するのではないかと想像する。やんごとなき生まれの方々が途中でどん底に落っこちて冒険を重ねた後にまた這い上がり…といった話。

クソ食らえ!と穏やかでない事を書いたけれども、ワタクシ、子供の頃好きだったお話や絵本を思い出すと、この貴種流離譚系の話がやたら多い事が分かった!

ざざっと例を挙げると、鉢かつぎ姫、ゆりわか大臣、信徳丸、小公女、王子と乞食、ロシア民話のかえるの王女…。

こうして見ると自分はつくづく、「貴種流離譚が好きな庶民」の例に漏れない、と思う。

なんでやねん。

なんで平民のワタクシが、尊いお方の苦労話なんか喜んで読んでるんだ!!

「面白い」。確かにそれはある。何の苦労も無く育った高貴なお方が全身膿み爛れた姿で乞食になってさまよったり、奴隷になって「この犬ころ!」とか言われながら鞭打たれたり。この落差の激しさ。萌えるんだよなあ。

ワタクシの好みは貧しい家で育った主人公が実は!高貴な血を引いていて…という、韓流ドラマとかによくあるやつよりも、生意気で調子こいてる主人公がどん底に落ちる系のやつ。グリム童話の「つぐみの髭の王様」とか「小栗判官」とか、もう大好き!! しかし「王子と乞食」の王子エドワードは、乞食になっても頑なに王子様気質が抜けず偉そうだったなあ…。

こんな風に、貴種流離譚には大いに楽しませてもらったといえ、最近はいくらか疑問を感じる。

結局、ヒーローになれるのは「貴種」だけなのか。平民が王様になっちゃいけないのか。

生まれや家柄と人格や実力は全く関係ない、という事は今の政治家を見ていてもよく分かる。にもかかわらず、日本の総理が世襲で決まり、それを我々がおかしいとも何とも思わないのは、この貴種流離譚という物語に我々の脳が縛られ、貴種でない人が頂点に立つ事に恐れを感じているからじゃないか。

だから、ワタクシ思うのだ。ファンタジーであっても、エンターテイメントであっても、貴種流離譚の枠をはみ出した物語がもっと出て来てほしいな、と。何の高貴な血も引いてない主人公が頂点に上り詰めたり、特殊な血筋でない人がすごい能力持ってたり努力で獲得したりするような物語、増えてほしいんだよなあ。

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